彼の言葉が信じられなかった。
否、信じたくなかった。


「じゃあ、ボクの足が壊れれば君はボクのところに戻ってきてくれるのかい?」
「そういう意味じゃないだろ」
「そうじゃないかッ」


思わず大声が出ていた。
一瞬にして頭に血が昇った。
らしくないんだ、こんなの。感情に走る、なんて。情けない。
息を継いでからゆっくり続けた。やたらに自分の声が耳に響く。覇気のないそんな声。

「……それはただの、同情じゃないか」
「わかってる。それでも誰かがアイツの傍にいなくちゃいけないんだ」
「貴方じゃなくてもいいじゃない」


ああ駄目だ。自分の意思とは無関係に涙が零れ落ちてしまう。瞳に映るタッツミーの姿がぼやけてしまう。それはまるで、これからを暗示しているようで。
タッツミーの指が、ボクの頬に伸びて、水滴を拭うけれど。ボクはその手を握りしめた。

お願いだよタッツ、どうかこのまま、貴方はボクの傍に、


「もう決めたから」
「どうして?どうしてボクを選んでくれなかったの?ボクだって、貴方が必要なんだ。貴方がいないと、ボクはどうすればいいの?」

子どもみたい。泣いてすがり付いて。わがままな子どもみたいだ。


「お前は大丈夫だよ」
「どうして言い切れるのさ」
「お前と一緒にいて、俺が出した結論。お前は、強いよ」

その評価はきっと、間違ってる。ボクは強くない。貴方が思っているほど、強くないよ。

「アイツが俺を求めるなら、俺はアイツの傍にいてやらなくちゃいけない。愛するフットボールが奪われようとしてるなら、なおさらな」
「そんなの、」
「俺は誰かに居て欲しかった」
「……ずるいよ、タッツミー」


ボクだって、貴方が苦しんでいた時、貴方の傍に居たかったさ。ぼろぼろになった貴方の身体を抱き締めたかった。


「好きだって言ってくれて、ありがとな。お前に惚れられてすげー幸せ者だったよな、俺」
「そうだよ、やっと気がついたの?」
「……泣くなよ」
「泣くよ。だって、ボクは貴方が好きだからね」


彼は静かにゴメンと言った



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