現役の2人
2/7はゴトタツDAY
***
ふわふわと浮わついた頭と僅かに火照った体で帰宅した。久しぶりに飲みすぎた。玄関扉は開いていて、鍵を閉め忘れたのかと思ったがアルコールの回った頭はすぐにそんなことはどうでも良くなってしまう。
良くなって、しまう……?
一度だけ瞬きをして再度目を凝らす。家具を見る限り自分の部屋であることは確からしいが。
目の前で起こったらしい惨事に目を丸くする。
「……なんだこれ」
「ごとー、おかえり、ごとー」
舌足らずな彼の言い種にハッとなってテーブルを確認すれば、ストックしてあった缶ビールが数本空けられていた。ついでにテーブルの下に転がっている空き缶も拾い上げる。
「飲みすぎだろ」
自分のことはこの際棚に上げて静かに肩を落とす。勝手に人の冷やしておいたビールを呑みやがって。いや、それより、勝手に人の家に入り込みやがってと怒る方が先だ。それに、
「たーつーみ?人の家荒らすんじゃない。一瞬泥棒でも入ったのかと思っただろう」
部屋中に散らばるのは自分の服、服、服。そりゃもう下衣から靴下から私服に至るまで。タンスの引き出しはだらしなく、どの段も開け拡げてある。
「……ない、」
「なにが?」
「2番ッ!」
ギッとキツく睨まれても困る。
2番?………ユニフォーム?
俺はクローゼットを開け遠征用のスポーツバッグの中からご所望を受けたユニフォームを引っ張り出した。それから達海に向かってそれを投げてやる。
「ほら、満足か?」
「んー」
暴れ放題だった動物が一気におとなしくなったようだ。
「シャワー浴びてくるから片付けておけよ?」
きっと戻ってきてもこのままの状態であろうことはわかりきっていたが言わずにはおけなかった。面倒なことを増やさないでもらいたい。
部屋に戻ってみれば、やはりというか、そのままの状態で。散らばる衣服にげんなりした。先ほどと変化したところといえば、達海が、自分の着ていた上着を脱ぎ捨て何故か俺のユニフォームを着て足を抱えて丸くなっている。
「寝てるのか?」
「…ん……ごとー、おそい、」
伸びてくる腕を甘んじて受け止める。体重がかけられ、抱き締められた。
「ほら、ベッドに運んでやるから」
「…んー…」
自分で動く気はないらしい
「おかえり、楽しかった?」
「拗ねてるのか?」
「べつにー、」
拗ねてるんだな
「ごとーが俺をおいてった」
「お前だって松本さんに誘われただろう。断らなければ良かったじゃないか」
松本さんから飲みに行こう、と誘われ、達海は何故か断っていたらしい。俺は達海も行くだろうと思っていたのだ。
「だって、飲みたい気分じゃなかったし」
「じゃあなんで人ん家に勝手に上がり込んで飲んでるんだよ」
ふい、とそっぽを向かれる。なぁ、達海?と自分でも驚くくらいの優しい声が出た。そうしたら達海は俺の顔をジッと見つめてから、
「ごとーのばーか、……っ…気づけっての!」
「達海?」
「……っ、」
着ているシャツをギュッと握られる。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「………ごとーといたかったんだよ……」
彼は相当酔っているらしい。なんだそれ。すごい殺し文句じゃないか。
達海を引きずりながら、なんとかベッドに辿り着く。同時に、貪るように唇を奪われた。アルコールの匂いが脳を刺激する。
「…ン、………だめ、」
達海の着るユニフォームを奪おうと手をかけたが叩かれてしまう。達海の顔を覗き込むと、着たまますんの、と唇が動いた。
「汚れる、だろ」
「洗えば、いいだろ?脱がしちゃ、ダメ、」
こうなっては言うことを聞かない。俺はしょうがないと内心ため息を吐いた。
この判断が後に間違っていたことも知らずに。
「は、……ごと、……っ、ん」
達海が熱を含んだ視線を送ってくるから、それに答えるように再び唇を重ねた。
少しサイズの大きな俺のユニフォームから覗く達海の太股につい視線を奪われた。もぞりと達海が動く拍子に白濁が、伝う。目の毒とはこのことだと思った。
「あー…」
「なに唸ってんの」
枕に埋めていた顔を上げた達海が、情事後の気だるい声で尋ねてくる。
「やっぱり、脱がせりゃ良かったよ」
俺の言葉に達海はニヤリと意地悪く笑う。まさか、
「試合中勃起させんなよ」
ニヒー、と笑う達海は最初からコレが狙いだったとは。
「ユニフォーム着る度、後藤が思い出してムラムラしたら相手してやるから安心しなさい」
胸を張って言ってのけた達海を呆れた目でしか見ることができなかった。
後先考えられないほど酔っていたのは自分だった。
脳裏に焼き付くキミの姿は甘い拘束
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