ねむくて、ねむくて、
どーしようもなくて、
でも、今、寝たら、ダメ、で

「かーんーとーく!」

ほら、
松ちゃんが呼ぶ。
わかっちゃいるが、どうも頭が働かない。

「うん、………あかさきが、」

あ、ちがう、堺が、

「監督!」

ぶんぶんと肩を揺すられる。
首ががくがく揺れる。

「松ちゃん、……わかった、から」

眠い眼を擦って、練習している選手に視線を向ける。今日も今日とて、選手たちは走る。声を出している。元気だねぇ、と他人事のように思った。別に自分が爛れているわけでは決してない、と言いたい。ついつい朝方まで、次の対戦相手の攻略法を考えてしまった。ベッドに倒れるように横になってから二時間も経たないうちに有里が起こしに来たから、ホント、眠くてしょうがない。
駆ける選手たちを瞳が映すが、行ったり来たりする選手の名前をつい、間違えた。



「おはよう、タッツミー」

不意に背後から腰に腕がまわり、抱き締められた。ふわりと甘い香りが鼻を掠める。

「んー、はよ、」
「ははっ、まだ眠いみたいだね」

耳に唇を寄せ、囁かれる声がくすぐったい。重い頭をジーノの肩に押し付けてみる。香水だろうか?ただ単にシャンプーの香りだろうか、やはりジーノから香る甘い匂いが心地好い。
んー、困ったね、とジーノが呟く。

「なーにが?」
「貴方、今、すっごく可愛いんだもの」

皆に見せられないよ。

くすくす笑う声に、ぼんやりここがグラウンドであることを思い出してしまう。手で、ジーノの胸を押しやると案外簡単に離れた。

「少しだけ、アップ中だけでも眠ったら良いんじゃないかな」
「やー、ダメだろ。監督だもん」

「そーですよ!しっかりしてください!それと王子は早く着替えて練習に加われ!」


真っ赤になった松ちゃんが、怒鳴るとジーノはやれやれと肩を竦めた。

「じゃあ、休憩の時にしっかり休んでね?」
「ん、そうする」
「でも、寝顔、皆に見せるのヤダ」
「お前じゃあるまいし、人の寝顔に興味ないだろ」
「もっと自覚持ってねタッツミー。貴方は魅力的なんだから。また来るよ」


ひらりと手を振って、クラブハウスの中に消えていくジーノ。隣にいる松ちゃんがため息をついた。

「どーしようもありませんねぇ」
「そーだね、あいつマイペースだから」
「あなたも、ですよ!監督!」

なんで、俺が怒られるの?と首を傾げると、

「いちゃつかないで下さい!迷惑です!大変迷惑してますっ!」

だってさ。



べつにいちゃいちゃなんてしてないし

共犯なんて。とんでもない。





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