コンビニの袋を手から提げて帰ってきた達海は自分の部屋の扉に寄りかかりながら待ちわびるジーノの姿を見つけて眉間に皺を寄せた。達海に気がつくとジーノは何かしらの会話をしていた電話を切り、携帯電話をポケットへとしまう。それから達海にニコリと笑顔を作った。


「遅いよタッツミー」


特に約束をしていたわけではない。相手のマイペース加減に達海は小さくため息をつく。


「そこ、邪魔だからどいてくんない?」
「話があるんだ。部屋、上がらせてよ」


断ったところで、聞かないであろう。達海にとっては買ってきたアイスが溶けることのほうが問題だった。ここで進まない会話をしていても無駄である。達海は渋々ジーノを招き入れた。




「で?話ってなに?」

一応形式上訊ねるものの、それほど興味はみせない。
アイスをくわえながら、散らかった部屋をごそごそと漁り、次の試合のための資料となるDVDを見つけ出し、テレビにセットするなり達海は画面に夢中になった。
達海の軽くあしらう態度にもちろん良い気がしないジーノは顔をしかめた。達海の座る横に無理矢理スペースを作り、身をおく。ちらりと横目に見ながらも再び画面に目を移してしまった達海にいよいよ焦れた。


「どうして避けるのかな」
「避けてない」
「うそ」


ジーノは達海の腕を乱暴に引きよせ、床に押さえ込んだ。驚いたように目を丸くした達海。


「やめろ、ジーノ」
「タッツミー」

抵抗する達海であったが両手はジーノにとられ、動くこともままならない。
低く名前を呼んでからジーノは達海に唇を重ねた。すぐさま舌をねじ込む。くちゅ、と音を立てながらの深い口づけ。次第に達海の瞳が潤む様を見て、ジーノは胸を熱くさせる。

「ん……っ、…は……」


達海は解放されて思いきり酸素を吸い込む。


「キミはボクを求めてる」
「どこからの、自信、だ」
「違った?」


それじゃあ最近のボクに対する視線は無意識?と耳元でくすりと笑われ、達海は身をすくめた。


「ジーノ、これ以上は……」
「どうしてだい、タッツミー?ボクはあなたを愛してるんだよ。それでタッツミーもボクを少なくとも気にかけている。なんの問題があるんだい?」


達海が俯いたので表情が読み取れない。ジーノは、達海の頬から顎へと指を滑らせ、顔を上げさせる。互いにかち合う視線に我慢が出来ず達海は目を閉じて小さく息を吐いた。


「………お前は勘違いしているだけだ。それは恋愛感情じゃない。距離をおいて接する俺が珍しいだけだ。だから逆に惹かれた。違うか?」


もういいだろう。帰れ。
達海はジーノの弱まった手を振りほどいた。暫し静寂が包む。



「そうかもね」

ジーノはゆっくりと口を開いた。
ねぇ、タッツミー?よく聞いて?
達海の手をもう一度取りながら、話を続ける。

達海は黙って耳を傾けた。不思議な気分になる。周囲から王子と呼ばれるのは伊達ではないと秘かに思う。


「タッツミーが言うように簡単に手に入らないから欲しくなるのかもしれないね。でも、それはどんな人でもいいわけじゃないよ。あなただから欲しいと思ったんだ」



王子さまは好き嫌い激しいわがままな性格だって、知ってるでしょ?







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