「…っ…お、い…!ッ、い、たッ…痛、……もっと、優しく、…ッしろ!ヨシダ!」


シーツをキツく握りしめながら後ろを振り返って睨み付けた俺は、なんとも拍子抜けしてしまった。な、なんだ?その顔は…。なんでそんな情けない顔してるわけ?意味わかんねーよ…?


「ゴメン。痛かった?……気をつける」

何度も謝られてしまうと、なんだかこちらが悪い気がしてならない。すっごく後味が悪い気分。………俺は悪くない、はずだ。尻の孔に指を突っ込まれて、尚且つ、男性器を受け入れてやろうって云うんだ。こちらの負担を考えたことがあるかね、吉田くん。とまぁ、男同士でこんなことをやる自体問題なので、今さら文句を言っても仕方がないだろうが。それにしてもその顔、やめてくれないか。調子が狂う。なんでそんなに戸惑った顔をしているわけ?


「ジーノ……?」
「もっと馴らすべきだったね。ゴメンよタッツミー」
「……あー…うん、いいけど」

いいけど、ってなんだ。痛いのは嫌だぞ。何許してんの俺。


「男相手なんてキミが初めてだからね。どうも何時ものようにはいかないらしいよ。女の子から痛いとかもっと優しくして、なんて今まで言われたことなかったんだよね。……正直、戸惑ってる」


眉を寄せて、さも困ったような表情をみせたジーノ。王子さまのことだから、女を今まで甚だ丁寧に扱ってきたに違いない。実際俺も様々な面において、そんな扱いを受けることが多かったのであって、その度に女じゃあるまいし、と鬱陶しく思っていた。例えば、初めて愛車に乗せてもらった時、ドアを開けてくれたのには驚いた。俺の好むドクターペッパーやスナック菓子など自分は一切食べやしない飲みやしないのに、必ずジーノの家にはストックされている。他にも些細な点にも早々気が利いている。それに顔も男前となれば大抵の女は惚れちまうと思う。そんなジーノは俺のどこに惹かれたのかね。コイツなら女なんて選び放題だろうに。一人の女性を愛して、家庭をもてば真っ当な人生を送れただろうに。俺なんて選ばなければ良かったのに。


「……タッツミー、なんか変なこと考えてるでしょ」
「別に」
「ならいいけど。」
「変なことじゃねぇよ、お前のことだもん」


俺の言葉にふにゃんとジーノはひとつ笑みを溢した。なんだかそれが異様に可愛らしく感じられた。鼓動が速まった。なんだかんだ言ってもね、結局俺だってコイツのこと好きなのよ。そう思う。


「俺だって、男は初めてで掘られる方だし……ちょっと、怖かっただけ。悪かった、ジーノに任せる」
「ありがとうタッツミー」


ちゅ、と王子さまは優しいキスを落として微笑んだ。



初めての日




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