達海さんがイングランドにいるその頃後藤さんは……?

――――


「たつみ、こら、噛むな、」


自分の着ているセーターをあむあむと噛むたつみを抱き起こすとにゃう、と小さく声を漏らした。胡座をかいた足の上に置いて落ち着かせると鼻先を擦り付けて、目を細めた。

「どうしたー?腹減ったのか?」
「にゃぅ、」
「わかったよ、用意するから」

まるで返事をしたように鳴いた猫に笑いながら後藤は立ち上がる。その後ろを、尻尾をゆらゆらと揺らしながら着いてくる様は非常に可愛らしい。

「ほら、どーぞ、」


好物らしい茹で玉子を潰したものを市販のキャットフードに混ぜ合わせ与えればすぐさま完食してしまった。

「にゃー」
「お腹一杯になったか?はは、それは良かった」

満足したかのように、鳴いた後たつみは自分の寝床とするクッションの上に早々丸くなってしまう。

「全くお前は自分勝手な奴だ」

達海みたいだ、と笑う。
この猫を自分の家に招いた当初からの感想だ。

「連絡も、寄越さないで。なぁ、達海。心配してるんだぞ」

近くに寄って丸まった体を撫でると迷惑そうな瞳が向けられた。額の辺りをくにくにと撫でてやれば、目を細めた猫は、かぷりと後藤の指に反撃とばかりに甘噛みをする。

「どこにいるんだか。生きてるのか?」


迷惑極まりないといったように尻尾を打ち、そっぽを向いた猫に、後藤はため息を吐いた。


正直、自分でも寂しい男だと薄々自覚しています



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