恋人の部屋を訪れてみても姿はなく、探し回っていたところでようやく見つけ出した。タッツミーの部屋、基クラブハウスから出てすぐ。彼はぼんやりとした表情で、芝の上に胡座をかいていた。戦略を立てるのにつまったのか。肌寒い季節だというのにふらりと出たというような薄着の格好は見ていて心配になってしまうよ。慌ててタッツミーの元へと駆け寄る。
ボクの顔を見るなり、彼は何かを思い出したような顔をした。


「そういえばお前、今日来るって言ってたな」

昼間の約束を憶えていてくれただけで嬉しいよ。君はボクのこと、あんまり考えてくれてなさそうだからね。……自分で言って哀しいけれど。


「いつものジャケットは?」
「んーわかんない。どこかにやっちまって。たぶん部屋に埋もれてると思う」
「片付けようよ」


着ていたコートを脱いでタッツミーにかけてあげれば、さすが王子、なんて言ってニヒ匕と笑っていた。当然のことをしたまでさ。
タッツミーの横に腰を下ろすと、冷たい指がボクの手に触れてきた。指を絡めて握りしめる。


「手、冷たい」
「うん」
「風邪引くよ?早く部屋入ろ?」

動く気はないのか、んー、と生返事を返してきたと思えば突然、肩を押されて芝の上に倒される。悪戯っ子のように笑うタッツミーにむっとすると、唇にキスが落ちてきた。触れるだけの可愛らしいキスだけどとても心が躍る。タッツミー、もっと。もっとして。首に腕をまわしてお願いしてみると、しょうがねぇなぁ、なんて呟いて口元を弛めていた。今日のタッツミーはサービス精神旺盛のようだ。





「王子さまが草まみれ」
「タッツミーのせいでしょ?」


上半身を起こしたタッツミーがボクの髪や服についた葉っぱを払いながら、楽しそうにしているので怒る気力も失せてしまう。まったく。ボクをこんな風に扱うことを許すのはタッツミーだけだからね。


「吉田」
「……だからそれで呼ばないでって言って「好き」


驚いて思わず彼を凝視してしまった。

え、今のは?
ボクの都合の良い空耳?

そうしたらタッツミーにもう一度押し倒された。
今度は顔を隠すようにボクの肩に額を押し付けてしまう。タッツミーの腕がボクの背にまわる。

「もう一回!もう一回言ってよタッツミー!」
「やーだ」


こっち向いてよ。顔が見たいのに。
胸元から聞こえるくぐもった声は、なかなか良い返事を返してくれなかった。


「ねー、もう部屋戻ろうよ。そうしたらもっと愛してあげるから!」


折角のボクの言葉はタッツミーに笑われるだけだった。
王子の癖に安っぽい台詞だなぁ。だなんて失礼しちゃうよね。




何度繰り返したって飽きやしないんだから!




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