タッツミー、タッツミー。
甘えたように自分の名前を呼んでくる彼のことを正直に言えば好きだ。本人には調子に乗るから言ってやらないけれど。
椿のことを犬、とよく例えているが吉田こそ、その種の類に入るのではないかと密かに思っている。彼は定期的に構ってやらねばすぐに機嫌を悪くする。待て、の時間が長ければ焦れた挙げ句襲いかかってくるのだ。全く躾がなっていない。随分と甘やかされたものだ。


「なに考えてるの?」

ほら。また眉間に皺を寄せて、ムスッと膨れる。それから一度唇をペロリと舐められる。隙間を抉じ開けて侵入してくる彼の舌を受け止めて、絡めてやれば吉田は楽しそうに目を細めていた。


「お前のこと、考えてたの」
「えー?本当?」


それは興味深いなぁ、なんて呟いている彼の見えない尻尾はまるで左右に勢いよく振れている。思わず顔がにやけてしまえば、吉田はきょとん、とした間抜け面でこちらの様子を窺っていた。そんな彼の頭をがしがしと撫で回せば、止めてよ!なんて非難の声が上がる。ぐしゃぐしゃに乱れた髪は、王子なんて呼べるものではない。なにすんの…、と髪をいちいち整える彼に先程の考えを訂正しなければならない。犬じゃねぇ。猫だ。

「嫌いじゃねぇよ、可愛いし」
「は?」
「猫の話」


時々タッツミーの考えてること、わかんない。と言いつつ擦り寄ってくる様は可笑しい。甘えるわ、拗ねるわ、コイツは忙しい。


「やっぱり違うこと考えてたんじゃないか。猫?なにそれ。タッツミーは今、ボクのこと考えてればそれで充分。君の頭の中はいつもフットボールのことなんだから今はボクのこと考えてよ」


お前が猫みたいだなんて考えてたこと吐き出したら怒るかな?それとも嬉しがるかな?口に出す気はないんだけどね。


「んー、じゃあもう一回しようぜ。なんか今、すっげーお前で満たされたい気分」


パッと身を起こした彼はそれから嬉しそうに何度も頷いて身体中あらゆるところにキスを落としてきやがった



餌を与えるのはもう手慣れたもの




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