※吹風
※吹雪死ネタ




みんなが帰った後の静かな教室に風丸はひとり佇んでいた。晴れて高校1年生となった風丸だが2ヶ月前に恋人である吹雪を交通事故で亡くした。原因は相手の飲酒運転からの暴走。吹雪なら避けられなくもないスピードだったのだがすぐ近くにいた女の子を庇って自分がひかれた。
俺が吹雪に会ったときには真っ青で息をしていない吹雪だった。もともと雪国の出身だから色が白いのだが、真っ青だったのはこたえた。生きていないという事実を突きつけられたら気がしてどうしようもない気持ちが心の中に渦巻いた。
運転手の裁判にも行ったが判決は無期懲役。日本の無期懲役は何年も経ち反省していると判断されれば刑務所から出てくるということが多々あった。俺から見てもこの運転手は反省しているように見えたから、きっと出てくるのだろう。そう思うと悔しくて悔しくて、仕方なかった。16歳で命をたたれた吹雪と42歳で吹雪をひき、まだ生きようとする運転手。この運転手には家族も居なかった、将来が有望なわけでもなかった。なぜ生きているんだろう。
昔、ハンムラビ法典にこんなものがあった。目には目を、歯には歯を。これを初めて知ったときはとてもグロテスクだと、わざわざそんなことを、と思っていた。しかし今ならわかる。故意では無いにせよやはりやってしまった手前それ相応の代価が必要だ。私たちは自分に関係のない事件事故など一時の哀れみだけですぐ忘れてしまう。社会で復帰できないことはないのだ。中傷にさらされるのは初めだけ。運転手はこれから先苦しみを背負うがそれが彼の演技でないとは言い切れない。人間にはなんて悪知恵があるのだろう。

この2ヶ月間そればかり考えてきた。円堂にいい加減目を覚ませ!!吹雪はそんなことを望んでいない!!と何度も言われた。俺だってわかってる。死んで償って欲しいと思いながらそんなことを吹雪が望んでいないと知っている。
憎悪とは恐ろしいものだ。高校1年生にしてこんなに人を憎むなんて思わなかった。

気が付いたら夕焼けに教室が照らされていた。時刻は午後4時。秋になって少しずつ日が短くなっている。もうすぐ冬。吹雪を思わせる季節の到来に、俺はまた泣くのかと苦笑いがこみ上げてきた。
帰るために教室の戸締まりをしようと歩く。開いていたのは教室の右一番後ろ、グラウンド側の窓。かつて吹雪が座っていた席があるところだ。今は別のクラスメートが座っている。
今日は風が強く白いカーテンがせわしなくなびいている。
部活が休みで7時間目から爆睡だった吹雪が起きるまでそばで待っていたらふにゃっとした声でおはようのキスして、と顔をこちらにあげてきたので笑いそうになりながらキスしたら突風によりなびいたカーテンに邪魔された事があった。

あれから随分経つけどカーテンにはまだ吹雪の唇の温もりが残っていそうな気がしてそっとカーテンにキスをした。




イナズマ高校生様提出