開幕にあたっての必要事項







この世界で一番許されない存在、それは私だ。





本当は知っていた。全部全部。なんでイタチがうちは一族を抹殺したのか、サスケを生かしたのか、誰が彼の戦争に対する弱みに漬け込んだか。暗部部隊長を担っていた私だから、ある程度の事は耳に入っていたんだ。──────────────────────────────────そして、イタチがどんな最期を望んでいたのかも。だけど私は彼を止めなかった。私自身戦いは出来るなら起こしたくなかったし、何よりも普段何も望まない彼が─────────────────────────────────────止めるな、うちはの血に染まるのは俺だけで良いんだ。そう言ったから。あんな辛そうに、泣きそうな表情で。









ねぇ、それでも私は貴方を独りにしたくなかった。だから、だから里抜けをする前日、私はイタチを夜中に呼び出した。私も着いていく。一緒に行かせて、と。だけど彼はまた泣きそうになりながら薄く微笑むとその大きくて温かい手で私の頭を撫でて、首を横に振った。それでも考えてしまうんだ。もしも。もしもあのとき、貴方の手を握って"行かないで"と叫べたら、私は独りで泣かないですんだのかもと。





余りにも優しい拒絶は私の心に微かな火照りだけを残した。







彼は翌日、たった一人の弟を残してこの地を去った。どうせなら、もっと傷付けて欲しかった。サスケの様に憎しみを植え付けてくれれば、私も貴方を忘れられたかもしれないのに。あんな甘い別れ方が在るでしょうか?────────────────────────────────────────────その後は里中から罵詈雑言を浴びせられた。お前もイタチの仲間か?アイツを手伝ったのか?木の葉の裏切り者がっ────────────────────────────────こんなの全くと言っていいほどどうでもよかった。ただ、一つだけ、"お前もサスケと同じように捨てられたんじゃないか?"私だって知りたかった。貴方を待ち続けていいのかって。











答えが見つからないままそれからはまるで現実を忘れるかの様にひたすら人を殺し続けた。暗殺任務をやりたがらない新人暗部の子の分も、命の危険が高い任務も。まるで自分を追い詰めるかの様に。そんな私を見かねた三代目は私に長期任務を出した。内容は"里の外から火の国を見守り、里が危機だと判断した際に帰って来い。"






私はイタチを追う様な形で里を出た。里のみんながどう思ったかは知らない。それから何年経ったのだろうか。三代目が死んだこと、サスケが里抜けしたこと、自来弥様が死んだこと、色々な情報が私に届いて来た。






そして、サスケがイタチの命を本格的に狙い始めたことも。それを知った瞬間、私は里に向かって走り出した。三日三晩ひたすら故郷に向かって。こんなときに時空間忍術が使えれば楽なのにな、と考えながら。









里に着いてからはすぐに、新しく火影になった綱手様に許可を貰って私はサスケとイタチを奪還して再び帰郷した。サスケは若いだけあって女の私に油断し、意外にも簡単に捕らえられた。





イタチは、────────私の姿を見ても慌てずに万華鏡写輪眼で応戦してきて山一つくらいは平地にしたと思う。私もイタチも瀕死状態になりながらも、何とか私は彼を里に連れ戻った。





帰ってからはひたすら働き続けた。サスケとイタチの確執を無くすため、二人の木の葉での地位を回復するため。──────────────────────────サスケの同期の子達はすぐに受け入れてくれた。ただ、頭の固い大人はそうはいかなかったんだ。何とか綱手様が説得したが未だ納得してない者は数多い。だけど二人は此処にいる。木の葉の額当てをして。気まずさは残っているみたいだけど一緒に暮らしている─────────────────────────らしい。







私は、二人を連れ帰ってからは一回も彼等に会っていない。任務の所為もあるが、何よりイタチに顔を合わせられない。彼なりの決心をして家族にまで手をかけたのに、彼の計画を切り捨てた私には──────────────────────会う資格は皆無だ。






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