淡色鈍色の追憶







カ「…流石だね。」





任務帰りにブラリと立ち寄った本屋で気になる特集をしていた雑誌を衝動買いすれば、年に一回若者によって行われる"尊敬する忍者アンケート(火影は除く)"が掲載されていた。女性部門では十一年間変わらないでトップに君臨し続ける空咲椿の名前。男性部門では同じく記録更新中な俺の名前。





──────いや、もしかしたらイタチと同じくらいの回数かもしれないけど。





──────そうだ。毎年男女の一位が顔写真を隣同士に並べられるが、昔はこの二人がコロコロ変わっていたっけな。男だけね。ある年は俺、又ある年はイタチ。





──────ま、アスマにはよく"三角関係か!"ってからかわれてたケド、実際当たってたし。自分に関しては疎いのに他人にはするどいんだよね。





──────嗚呼、勘違いしないでね?別にアスマについて語りたい訳じゃないから。そうだ、今回は椿について話そうかな。本人には言わないでね?また冷ややかな目で見られるから。








椿はイタチと同い年でさ、いつも一緒にいたよ。二人で十才のときに中忍になってさ。あ、でも暗部入りしたのも部隊長になったのも椿が先だ。きっと彼の背中を追うんじゃなくて、隣に並びたかったんだろうね。結局抜かしてるけど。




いやー、あの頃は有望な新人が増えて柄にもなく嬉しかったんだけどね。片方は里から抜けるし、もう片方もいきなり居なくなるし、ま、今は両方居るけどな!








──────え?何?俺と椿のなり染めが聞きたいって?そーだねぇ、俺らも結婚してから三年だし、そんな昔の事なんて…──────ま、冗談もここまでにしよーか。








「なあ、カカシは新入りの二人もう見たか?」





珍しく暗部の任務が無かった俺は新しく出たイチャイチャシリーズを林の中で木にもたれながら読んでいる最中だった。そこにいきなり現れたのは全身泥まみれなアスマ。





──────何で俺の癒やしの時間をこわすのよ。




カ「うちは一族の有望な少年とその幼なじみの女の子でしょ、いくら疎い俺でもそれ位は知ってるよ。」





やっと面白い内容に差し掛かった時だったので、決して本からは目を反らさずに返せば溜め息を一つされた。





ア「女の子の方がよ、この先で修行しててな。付き合ったらこのざまだ。本当に有望株だぜ。」





苦笑しながら煙草を胸元から取り出し、当たり前の様に加える男。泥まみれでカッコつけるなんて何処の三流映画の主人公だよ。あ、アスマが成人かどうかは放っておいてよ。





カ「ガキにそのざまとかダサ。お前五月蠅いし、もう行くから。」



ア「おまっ!…そいつの名前椿っていうんだ!」









──────椿、ねぇ。どーせ、うちは君の追っかけしてて後を付いて来たら暗部にまで成っちゃいました!じゃないの?ま、そんな程度の気持ちで暗部やら中忍に成れちゃうんじゃ木の葉も色々と危ないけど。





今となっては素晴らしい勘違いをしていた俺は、新人達よりも新刊の続きが大切で、はやる気持ちが押さえきれなく、とうとう読み歩き始めてしまった。




まさしく若気の至り。お盛んな年頃の俺は濡れ場になった内容に夢中になって周りの気配を全く気にしていなかった。五、六メートル行った頃だったか木の根っこに躓かない様に歩いていた時、頭上の枝の葉っぱからガサッと大きな音が鳴った。





カ「誰だっ!?」





やっと気付けた気配に反応してももう遅く、背後には木からぶら下がり、俺の首に術か何かで強化された爪を添える少女がいた。





『…何だ、木の葉の忍か。紛らわしい。ねぇ、ゴツい男の人見ませんでした?鬼ごっこしてたんだけど…いなくて。アスマって名前の筈なんですが。』








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