登山家は「そこに山が有ったから」と言って山を登る。
ならば俺は「そこに背中が有ったから」と言って抱き付く。

「ゼファー先生ー」
「ん?…お前か」
「露骨に嫌な顔をする先生も素敵ですね」

後ろ姿さえも逞すぃ(逞しい)ゼファー先生の背中に飛び付きぶら下がれば溜め息を吐かれた。
だが振り落さない所を見れば先生も満更ではないのが分かる。
なんたって俺は先生の(自称)お気に入りなんだからな!
ふっふっふっ。俺って何て罪な男なんだ。

「馬鹿な事を考えてるのは分かるが張り付いてきてどうしたんだ?」
「ストレートな物言いの先生も素敵です。まぁどうしてかっていうと「そこに背中が有ったから」ですかね」
「相変わらず馬鹿だな」
「この数秒の間に二回も馬鹿と言われるとはこれ如何に」

辛辣な先生も素敵なんでそんな事ではへこたれない俺は更に強く抱き着く。
流石は子持ちのおっさん、安定感が半端無いぜ!!
その後どうやって嗅ぎ付けたのかサカズキが窓からダイナミックに現れ先生から俺を引き剥がし外へとぶん投げられた。
凄く綺麗な青空を最後に俺の視界は真っ暗となり次に写ったのは医務室の白い天井だった。