新米海兵に宛がわれた部屋に男が二人ベッドに向かい合って座っている。
クザンは目の前に座る笑顔の男に向かって溜め息を吐いた。
溜め息を吐かれた男――ダニエルは訳が分からないと言った顔をする。

「如何したのクザン?」
「………ハァ。あのさ、あんまこういう事は言いたくねーんだが、あれだ、あれ」
「“あれ”ってなんだい?」
「だから…あー…、あんまり誰彼構わず笑わないでって、こと」

そう言うや否やクザンは癖のある髪を掻き毟り後ろを向いてしまった。
ダニエルは少し考えてから言われた意味を理解し小さく声を漏らしながら笑った。

元来ダニエルという男は「笑顔を絶やさない青年」で有名な男で勉学や訓練等の最中でも苦しくても辛くても疲れても何時でも笑顔なのである。(彼の笑顔以外の表情は未だ恋人のクザン以外は見た事が無いという。
その笑顔は見る人を癒す力を持っている様でダニエルの笑顔目的に人が集まる事が多い。
皆に好かれるのは恋人としては嬉しい事だが内心では楽しくは無く複雑な心境なのだ。

「ふふ、まさかそんな事言われるとは吃驚したなぁ」
「………あっそ」

クスクスと笑うダニエルにクザンは気を悪くしたのか不貞寝してやるとベッドに横になった。
それを見て更にダニエルは笑みを深めるとクザンの背中に身を寄せながら自身も横になった。