この主人公設定で「もしQ113の抜刀シーンに居たら」というお話しです。




ぱちん、と乾いた音がその場に響いた。

「…………」

打たれた頬を手で押さえながら驚きで目を見開く赤司君と今まで見たこと無い険しい顔で彼を見る苗字先輩に息を呑んだ。
中学時代(その前からかもしれないが僕的にはどうでも良い)から社会のヒエラルキーで表すと上位に居る赤司君からは想像もされない状況が今目の前に起きている。
ぶっちゃけて言えば「赤司君ザマァ」と言いたいし「親にもぶたれた事ないのに…!」な顔をまだ堪能していたいが他のメンバーの顔面がやばい事になって視界的に気持ちが悪いので速やかに事を収めなくてはならない。
しかし苗字先輩の後ろでわたわたする火神君が可愛いのでもう少し…と思う自分がいる。

「……っ、貴様、僕に何を「どう責任を取るつもりでやった」…は、」

意識を戻した(僕も戻した)赤司君が苗字先輩を射殺さんばかりに睨み威嚇するがその上から被された台詞にきょとんと年相応の顔をした――と思ったら苗字先輩の手が赤司君の顔を鷲掴んだ。(あの赤司君が……あの赤司君が「にゅっ」て唇を出した顔をしている!!)

「私が止めたから良いものをあのまま火神君に鋏で切り付け怪我をさせたらどう責任を取るつもりだ。君一人の問題では無くなるし今後の生活、人生に支障をもたらす。しかも「僕に逆らう奴は親でも殺す」?何をふざけた事を。君がここまで生きて成長し学校にも行かせて貰っているのはその親のお蔭だぞ。それなのに何て物騒な事を言うんだ。君は道徳心を無くしているのか?今まで何を学んできたのだ君は。人を傷つけ親を殺そうとするのを学んできたのか。そうなれば今すぐミトコンドリアからやりなおせ。そして謝罪しろ火神君と君の親に。さぁ、さぁ!」
「っご、ごめ、な、さぃ…」

苗字先輩の真顔でノンブレス説教された赤司君は猫の様な瞳からぽろぽろ涙を流しか細い声で謝った。
あれは火神君や親御さんを思ってでは無く苗字先輩の気迫に負け無意識に零れた謝罪だとすぐに分かった。
滅多な事では怒らない人程怒ると凄く怖いというのは本当だなと苗字先輩の放つ怒りのオーラに当てられ怯える火神君と怖さに泣いている他のキセキ達に溜め息を付き僕は先輩へと足を動かした。