私は猫が大好きである。
というより猫科の動物は全て大好きである。
どの位好きかと言うと目の前に居るだけでどんぶり飯を五杯食える程だ。
本気である。

「ほーらほらほら。ご飯だぞォ」

持参した猫缶や猫用かつおぶし、にぼしその他諸々を集まってきた猫達に分け隔てなく配る。
にゃぁ、にぁ、おぁー、なーお。
様々な鳴き声だが皆一様に甘えた声を出しておりこれこそ「猫なで声」だと頭の中で考えくだらない事を言ったなと反省した。
しかし……そんな私にはある重大過ぎる問題がある。

「おたべ…っくし!ぶぇっくしぃ!!」

私は猫アレルギーなのだ。

犬、鳥、ハムスター等の他動物達は全然平気なのだが猫(猫科)だけはアレルギー反応が出てしまいこうしてくしゃみや酷い時には蕁麻疹が出てしまう。
かと言って完全防備で猫達に会いに行く事は私は絶対にしたくないのだ。
それはまるで「猫が悪いから私はアレルギーが酷いんだ」と主張していると思うからだ。
だから私は自分の実を滅ぼそうとも生身で猫達に会いに行くのだ。
これこそ私が猫に捧げる究極の愛なのである。

なのだがこの間アレルギーが少し酷くなり(止まらないくしゃみ、流れ出る鼻水、収まらない蕁麻疹なだけなんだけどなァ)仕事に支障が出るのも嫌なので医者に行ったら俺にとって最大の死活問題となる事を申告された。

「アレルギー反応が酷過ぎますね。最低でも半年は猫に近付かないで下さい」

目の前が真っ暗になり私の人生が終わった瞬間であった。
たかが半年だろうと言った知人が居たので「貴様は半年間食料もましてや水も一切口に含む事も出来ずに生きる事は出来るか!?」とボコボコに殴っておいた。
私にって猫というのは原動力である。
その原動力が与えられないという事は動く事が出来なくなるという事―――つまり「死」だ。

「と、言う訳で………私はもう駄目だよクザン君…」
「うっわ。すげー生気無いっすね名前さん」

本部の食堂で食事を取れる気になれなくてクザン君の執務室に言って愚痴を零しながら少しずつ食べる。(流石にこの仕事をしていると食べなくてはやっていけないので食うのだが味気がない。)
何故クザン君の執務室を選んだかだって?なんとなくです。

「猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫猫描猫猫猫猫猫」
「ちょっ。俺の部屋の空気が可笑しくなるんで――って一つだけ違う漢字混じってません?」
「クザン君…私の骨は海軍の東側の橋の下に埋めてくれ。あそこは正に私の良い墓場だから…」
「めちゃくちゃ猫が居るってことっすね、そこ」

クザン君に私の埋葬先をお願いしながら胸ポケットに仕舞ってある猫達の集合写真を見詰め涙が出そうになるのを唇を噛んで耐える。
五十を超えたおっさんが泣くなんて惨めだなとか言った奴、後で一対一で話そうではないか。

「うう、ねこー、ねこォーー……」
「……はぁ」

溜め息吐かないでクザン君。
おじさん本格的に泣いちゃうから。