シュルリ、と身体に纏わり付く黒い物体に眉を潜めた。

「アレックス」
「何だ」
「これ。なに」
「………フン」

そう指摘すればアレックスは鼻を鳴らして触手を自分の中へと仕舞った。
なんやねん。

特になにもする事のない、というより世界が“こう”なってからは毎日する事ないのだが…という話しは置いといて、そんな今日この頃な感じで適当に拾ったボロボロのソファに座って雑誌を読んでいると隣りに座るアレックスから伸びる触手が私の身体に触れてきたのだ。
今回が初めてじゃないのだけれどアレックスは時々こんな事を無意識の内にしてくる。
アレックスが触手を出すのは戦う時か、相手を吸収する時――アレックスは私を吸収したいのだろうか?

「アレックスは私を吸収したいの?」
「…何故そう考える」
「こうも無意識に触手を出しては私の身体に触れてくるから、そうなのかなーって今思った」
「……かも、しれないな」
「マジか。なにそれ怖い」

おどけて自分の肩を掴み怯えるフリをしながらアレックスを見ると凄く嫌そうな顔で睨まれた。
顔が整っている分迫力があって怖い。
とりあえず馬鹿な事を止めてアレックスに向き合う形に座る。

「私なんか吸収してもなんの情報もないよ。あるとしたら幼少の頃の黒歴史ぐらいしか…」
「お前にそんな事は求めていない。自惚れるな」
「(辛辣……。)じゃぁ、なんで「かもしれない」なんて言ったの?」
「……そうすればfirstは誰の目にも止まらず俺の中でだけ存在する」

そう考えただけだ、なんて言ったアレックスの顔がとても「人間」らしく不覚にもときめいた。
クッソ!ひじきの癖に!!!



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from.rain様
L相互リンクありがとうございました!