目の前の男が俺をどうしたいのか分からない。
逃げれば罵声を浴びせながら鬼の形相で殺しに来るのに捕まえて強制的に傍に居させると酷く優しい声で愛を囁く。

「Darling、君は本当に美しい。見てご覧、この無駄な肉の無い脚を」

うっとりとした表情で俺の脚に頬擦りをする男に鳥肌が立った。
荒縄で椅子に縛り付けた俺は剥き出しにされた下半身の寒さを耐えながら男が満足するのを待っている。
何時も通りに命懸け(その名の通りだ)の鬼ごっこをして捕まったら何故かこんな仕打ちを受けられる俺の気持ちを誰か分かる奴は居るか?いや居ないだろう。

「俺は幾人の人を見てきた。でも皆、Darlingの足元には及ばない、というより天秤に掛けるのもおこがましい存在だったよ」

じょり、と毛が生えかけている(前に綺麗さっぱり剃られたのだ)脛を男は指の腹で撫でた。
男に触れられて喜ぶ訳でもない俺は徐々にエスカレートしていく愛撫に吐き気がしてきた。

「ああ。この毛の一本一本も美しいよ。Darling」

あ、これ吐く。
そう思った瞬間、胃からせり上がってきた物を吐瀉した。