唐突に月が見たくなった俺はアルタイルを誘いマシャフで一番の高台へと登った。(まさか乗ってくれるとは思わなく変な声を出したのは内緒だ。)
一気に近くなった月に感動しながら横に立つアルタイルの顔を盗み見た。
普段はフードに隠れたアルタイルの素顔を月が照らしてくれて良く見える。

「……綺麗だ」
「ああ。こんなに月を近くで見たのは初めてだ」
「あ、ああ。そう、うん。月綺麗だなー」
「?」

呟いた言葉をアルタイルに返されて焦ったが自分の事を言ってると気付いてない様子で安心した。
安堵の息を吐く俺を見るアルタイルは不思議そうに首を傾げる。

「し、しかしあれだなアルタイル。今日の月は一段と大きいな」
「そうだな。まるで掴めそうだ」

何とか話題を出して気を逸らそうと(折角月を見に来たので)月の話しをしてみた。
以外にも話しに乗って来たアルタイルは何時もなら言わない事を言いながら月に向かって左手を伸ばした。
それを追って再度視線を月に戻す。

「こんなにも近くにあるのに、届かないのだな」
「まぁ実際はもっと離れてるだろうしな」
「……俺の近くにもこんな奴がいる」
「―――え?」

そう話したアルタイルは伸ばしていた手を引っ込めると俺に向き合った。
行き成りの事に驚いて固まる俺をそのままにアルタイルは微笑みこちらに向かって顔を近付けると――。

「っ、」

息が止まった。