緑の瞳が俺を見詰める。

「クリス……?」

喫煙所の椅子に隣同士で座り他愛の無い会話をしていたのだが気付いたらfirstの手を掴んでいた。
理由は分かっている――ジルと結婚すると言ったからだ。
昔から二人は思い合っていて俺はそれを隣りでずっと見て来てたので何時の日かはこうなる結果になるとは思っていたが……。

「結婚、するのか?」
「あ、ああ。実は昨日決めたからまだ皆には言ってないんだが」

一番先にクリスに言っておきたくてな、そう言ってfirstは笑いながら照明によって光り輝くリングを俺に見せた。

ソレを見た瞬間目の前が赤くなった。



「――、――――」

薄暗い湿った廊下を歩きながらfirstが昔から好きだと言っていた歌を歌う。
右手に持つプレートに乗せたシチューとパンから美味そうな匂いがして腹が減ってきたなと思いながら目当ての部屋に辿り着き錆びたドアノブをゆっくりと回した。

「っ、相変わらずな匂いだな」

開けた途端、むあっとした生臭い空気が俺を包み込み顔を顰める。(まぁそうなる様にしたのは俺であるから仕方が無い事なんだけどな。)
手の甲で口元を覆いながら小さく揺れ動く蝋燭の元まで行けばぐったりと横たわるfirstが俺を見て震えた。
ああ、そんな嬉しそうな反応をしないでくれよ。

「やぁfirst。調子はどうだい?」