「――という訳でどうにかしてください隊長」
「う、うーん…」
「たいちょ、たいちょ、たいちょっ!」
「ちょっとうるさいから黙ってなさい」

ピアーズに抱き上げられたfirstの姿を見てクリスは頭を抱えた。
あの後。何故か小さくなり更に犬の姿に近い状態になってしまったfirstは短い手足とクルンと丸まった尻尾をばたつかせクリスの名前を呼びながら手を伸ばす。
その姿を見たクリスは「このままで良いんじゃ…」と考えてしまったがピアーズに睨まれ顔を逸らした。

「あー…それで、この主犯者はどこに行った?」
「任務で遠征に……」
「ジル……」
「たいちょっ、だっこしてください!だっこ!」
「……ああ。いいぞほら」

クリスとピアーズが真剣に話しているがお構いなしに抱っこを所望するfirstにクリスは苦笑いを浮かべながら言われた通りにした。
そうするとクリスに構って貰って相当嬉しいのか高い声を上げて笑うfirstを見たピアーズは見た目だけでなく思考も幼くなってしまったのかと頭を抱えた。

「しかし本人が居ない事には戻す手掛かりも無いだろう。ここはジル帰りのを待つしかないな」
「そう、ですね。ですが俺としてはもう一つ問題が有るのです」
「何が―――あ、うん。あれね。うん」

ピアーズがそっと視線を寄越した先を見てクリスは納得した。
数メートル離れた先に居るfirstを慕う女性達が瞳をギラ付かせクリスを――というよりクリスに抱っこされたfirstを見詰めているからだ。
見詰めるというより掻っ攫おうという方が合っているやもしれない。

「………ピアーズ」
「………はい」
「絶対に守り抜くぞ…っ!!」
「Yes,sir!!」
「?」

ここにまた一人「firstをお姉様方から守ろうの会」に加わった。