腕に抱いた小さな生き物を昔だったら必死に遠ざけただろう。
俺の様な男が軽く抱くだけでも潰れてしまいそうな程脆い生き物――赤ん坊は何が楽しいのか俺に向かって手を伸ばし笑顔である。
白いベッドに横になっているジルも笑顔で俺を見詰めるので気恥ずかしい。

「もうパパが分かるのね」
「そうか…賢いな」
「ふふ。そうね」

ジルは綺麗に笑って白く細い腕で赤ん坊の頭を撫でた。

お互いにいい歳になりそろそろジルに結婚でも切り出そうかとしたらまさかの妊娠が発覚し順番が違うが夫婦となった俺達。
クリスを筆頭に皆祝ってくれ中には泣きながらも奴も居て釣られて俺も泣いてしまったのは懐かしい記憶だ。
妊娠しても仕事をこなすジルに俺は何度も産休を取ってくれと言ったが全然聞いてくれなかったのも懐かしいものだ。

「――first?」
「ぁ、いや。ちょっと思い出してた」
「ああ。貴方が私の妊娠が分かって持っていた銃を落とし発砲した事?」
「いや、違うけど…まぁそんな事もあったね」
「あんな顔初めて見たわよ私」
「ははは、俺も初めてしたと思うよ」

そう言って腕の中の赤ん坊を見れば大きな欠伸をして眠そうな顔をしていた。
そっとジルに渡せば慣れた動きで腕に抱え背中を優しく叩きながら眠気を誘う。
ゆるゆると落ちていく瞼と静かな呼吸が聞こえてくればもう夢の中へと入った赤ん坊にジルは笑うとベビーベッドへと寝かせた。

「…本当に俺達の子なんだな」
「あら。その言い方だと私が別の男の子を産んだ様に聞こえるんだけど」
「え!?や、違くて、その…まだ実感が湧かないんだ」
「まぁそうよね。一発で出来ちゃったものね」

凄い事よ!と良い笑顔で言われて顔面が熱くなった。
俺だって吃驚しているよ、まさかたった一回の行為で出来てしまっただなんて。(避妊はしてたんだけどなー…。)
まぁ子供のすぐ傍でこんなアダルティな会話はもう止めようとすればジルが何かを考える様な顔をしていた。

「どうした?」
「んー、あのねfirst。この子が産まれてすぐで悪いんだけど…」
「うん?」

ちょい、と手で呼ばれたので顔を近付ければ耳元で囁かれた。

「もう一人…今年中につくらない?」

またもや顔が熱くなったのは言うまでもない。