銃の手入れをする俺の目の前にテーブルに手を付いて顔半分を出してこちらを伺う小動物が二人居る。
きゅるん、とした四つのガラス玉みたいなころころした瞳が俺を見る。

「…………」
「「……」」
「……あー。遊びたい、のかな?」
「「!」」

「遊ぶ」という単語を聞いて二人…ジェイクとピアーズは嬉しそうな顔になった。
そのままの体勢で身体を跳ね始めたので今すぐに遊びたい様子だと分かった俺は重い腰を上げて二人を片腕ずつ抱き広場へと向かった。

軍人用のだだっ広いグラウンドでも外へ出れた嬉しさなのかジェイクがそわそわし始めた。
ジェイクより少しお兄さんのピアーズは大人しいが目がキラキラして犬の様である。

「はい。遊んできな」
「っおれ、あれのりたい!」
「おれはあれであそびたい!」
「ジェイク、バイクはまだ早いから後で俺が乗せるから。ピアーズ、アンチマは今お休みの時間だからこっち(水鉄砲)で我慢してくれ」
「「はーい」」

うん。素直で良い子達だ。
ピアーズだけに水鉄砲を渡すのは可哀想だからジェイクにも渡せば嬉しそうにして二人で撃ち合いを始めた。
俺はそれを遠からず近からずの位置で見守れば後ろから声を掛けられた。

「相変わらず人気ねfirst」
「ジジジジル!?い、いや、人気だなんて…っ」
「ふふ。だってあの子達first以外に近付かないのよ?」
「多分クリスとウェスカーが俺によく預けるからだよ」

演習終わりなのだろうか薄らと汗を掻いたジルがスポーツ飲料を飲みながら話し掛けてきた。
行き成りの登場にどもってしまったがジルは気にして無い様だ。

「それにしても…あの子達良く遊ぶわねー」
「子供ってのは身体を動かすのが大好きだからな」
「あ。ジェイクくんこけたわ」
「え!?」

慌てて顔を向ければ俯せになったジェイクがぴーぴー泣いていた。
傍ではピアーズがおろおろと困っており顔が歪んでいくのが遠くからでもハッキリ分かった。
あ、これはヤバイな。

「あーっ、ぇ、いちゃいーっ!」
「ジェイクっ、いたいのないないだよ、ないな、いっぅ、うぅ…っ」
「あああ。落ち着けお前等っ」

走ってジェイクを抱き起こせば首に短い腕を回して抱き付いてきた。
子供ってのは影響されやすい生き物なので泣いてる子を見れば自分も泣いてしまうという厄介なものである。
ピアーズも例に漏れなく何時もはお兄さんぶって泣く事をしないのに今はぼろぼろと涙を零している。
それでも俺に抱き付くジェイクへと手を伸ばし一緒にあやそうとしてとても微笑ましい。

「ジェイクっ、いたいの、ないない。ないないよー」
「ぅえっ、ふぇ、ぐす…ないない?」
「うん。ないない」
「……ない、ないねー」

ピアーズの手が届く様にしゃがんでやればジェイクの形の良い頭を撫でる。
涙を流しながらも必死にあやすピアーズにジェイクは満面の笑みを浮かべると身体を捩らせピアーズへと腕を伸ばした。
ピアーズも腕を伸ばし俺からジェイクを預かれば自分よりちょっと小さいジェイクを頑張って抱っこしてニコニコと笑顔になる。

「いたいのないないした?」
「した!もういたい、ない!」
「そっか。じゃ、あそぼ」
「うんっ!」

何だかんだで涙が引っ込んだ両者はまた水鉄砲を持ち出し遊び始めた。
子供ってのは純粋で単純で面白いなと親になった気持ちで見ていればニヤニヤという擬音が似合う笑顔でジルが立っていた。

「…なんだ?」
「もういっその事あの二人のパパになったら?」
「!? 結婚もしてないのに子持ちなんて嫌だよ俺!」
「ならする?」
「――へ、」

間抜けな俺の声の後、視界が真っ暗になった。