俺は一般人より肉付きが良い。
簡単に言えば“デブ”だ。


むに、とダンテの細い指が俺の腹を掴んだ。
正確には腹の“肉”を掴んだ。

「……ダンテ?」
「…俺と同じ物食ってんのに何でこんなに肉が、もがっ」
「言うな。自分が一番分かってるんだから」

その先を言おうとするダンテの口を手の平で塞げばモゴモゴとまだ何かを喋ろうとする。
確かに俺はダンテと同じ物を食べてるが何故か痩せないんだ。
運動はしている。
買い物と仕事へは必ず徒歩だし天気の良い日にはジョギングだってする。
なのに減らない体重と細くならない身体落ちない脂肪。(だが増えることはない体重と脂肪には感謝している。)
体質なのか遺伝(親父も俺と同じ体系だ)なのか分からないが困ったものだ。

「運動はしてるし野菜も食ってる。菓子もジャンクフードも食べないのに何でだ?」
「地味に傷付くから止めてダンテ。あとそう言いながら目の前でお菓子食うの止めて」
「ポテチうまい」
「感想も良いから!」

シャクシャクと音を立てながらポテトチップ(うす塩味)を食べるダンテに泣けてきて両手で顔を覆う。

「痩せたい…筋肉欲しい…」
「…………」

指に付いたカスを舐めながらダンテは俺の膝の上に馬乗りになる。
顔を覆っている手を退かされればダンテの丸い瞳とご対面した。

「俺は柔らかいし気持ち良いから好きだけど」
「……デブなだけだ」
「そうか?平均よりちょい上なだけじゃね?」
「(フォローになってない…)ダンテは痩せてるし筋肉があるから言えるんだよ」
「でもバージルは「もっとお肉食べなさい!」って言うんだよな」
「あー…それは思う」

お兄さんの言う通りダンテは細い。(抱き締めると骨が当たって若干痛いのは秘密だ。)
ダンテは自分の腰を両手で掴むと首を傾げながら「細いか?」と聞いてきたので頷いた。

「これでも太ったんだけどな」
「確かに。アバラが浮いてた時期もあったよね」
「メシ食っても太らんねーんだよ」
「それが羨ましい」
「俺はfirstが羨ましい」

そう言うとダンテは俺の首筋に顔を埋め擦り付けてきてまるで子猫が甘えるみたいな仕草にくすぐったく笑ってしまう。

「firstはそのままで良いから」
「でもなぁ……」
「痩せたらぶん殴る」
「死にたくないので頑張らせて頂きます」

真顔でダンテにそう言われれば頷くしかない俺。
俺の潔さが面白かったのかダンテは笑うと首筋にキスを落とした。

その後。体系の話しはする事は無かった
それから何処から俺達の話しを入手したか知らないがお兄さんから大量の肉とダイエット用品が送られてきた。
肉は有り難く受け取ってダイエット用品はもしもの為にと取っておこうとしたのだが凄まじい形相のダンテに全て奪われ燃やされてしまった。
その姿は過去最高の恐怖だった。