firstは俺の正体を知らない。
だが教えようとも思わない。
知ってしまったら俺から遠ざかって行くという恐怖を感じているからだ。
只でさえ同性だというのにネックになっているのに「化け物」で「悪魔」に命を狙われてるなんて奴を恋人にしたいと誰が思うか。
これ以上負担を掛けたくないと感じる自分が居る。
だから俺はこれからも一緒に居られる間だけ秘密にしている。

「知ってたよ。結構前から」
「………は?」

…だったが何故か知っていたという事態が発生した。
「ダンテと出会って…三か月後位にかな?」なんて呑気に思い出を語るfirstとは対照的に俺の全身から冷や汗がダラダラ出て来て尋常じゃない位に身体が強張っていく。
驚きと恐怖で口を開いても言葉が出なく外に出された魚みたいに水を求める動きをする俺にfirstは読み途中の雑誌を置いて俺の前にしゃがんだ。
大きく骨ばった両手が俺の両手を包み込む。

「まぁ、ダンテとお兄さんの話しを盗み聞きして知ったんだけどね。でもダンテが言いたくなさそうだったから黙ってたんだ。…ごめんダンテ」
「――っなら、何で今も一緒に居るんだよ!?」
「何でって…俺はダンテが好きだからだよ」
「化け物の近くにいるんだぞっ…それにお前みたいな人間なんかすぐに殺されるぞ!?」
「それでも俺はダンテの傍に居たいんだよ。ごめんな…人間で」
「っ、」

俺の一方的な言い方にfirstは困った顔で笑う。
違う、そんな顔をして貰いたいんじゃないし「人間」だからとか関係無い。
只俺は大好きなfirstに幸せになって欲しいのに俺の所為でそれを壊すのが怖いんだ。
だけどfirstは優しい顔で俺にそんな事を言ってくるから両目から涙が溢れ出し握られた手へと落ちていった。

「お、俺はこんなに人を愛したのは初めてなんだっ」
「うん」
「だから…ふ、怖いんだよっ…幸せになって欲しいんだよぉ……」
「ダンテ……そう言ってくれるなら俺から幸せを奪わないでくれ――俺にとっての幸せはダンテと一緒に居られる事だから」

しゃくり上げながら言った俺にfirstは微笑むと目尻にキスを落とした。

「first……」
「ダンテはダンテだよ。そんなダンテも俺は好きだし愛してる」
「…その言葉、忘れんなよっ」
「はは。忘れないさ」

俺の睨みと脅しにfirstは笑ったが瞳は真剣であった。
一気に身体中の力が抜けfirstの肩に顔を埋めると大好きな匂いが鼻の中に充満し気分が落ち着いてきた。
firstは俺の手から両手を離すと広く逞しい腕で俺を抱き締める。
温かい体温を感じながらこれからもこの男と人生を歩んで生きたいと思いながらゆっくり瞳を閉じた。