「夏だ!」
「休暇だ!!」
「海だぁぁああっ!!!」

上からフィン、first、マルコの順番で海に向かって叫ぶと勢い良く砂浜へと向かっていった。
その後ろでクリスは休日のお父さんの笑顔で見送りピアーズは全力で他人の振りをした。
何故BSAAのメンバーが海に居るというと……。
話しは遡り一週間前――BSAA隊員が愛用する食堂中央のテーブルに二人の美女と美青年(女)が向かい合って座っていた。

「え。水着を持ってないですって?」
「はい」

ジルはこの世の終わりの様な顔をする。
その隣のシェバも同じ顔をしてfirstを見詰める。
firstは「面倒臭いのでシャツと半ズボンで済ませますねー。こういう感じの奴ですっ」と手でジェスチャーをして説明するが二人の耳には入ってなかった。
するとシェバが勢いよく立ち上がりfirstの手を両手で強く握る。

「買いに行くわよ!」
「へ」
「OK。今すぐ車の手配とカタログを用意するわ」
「話しが早いわねジル!」

グッジョブ!ジルに向かって親指を立てるとシェバはfirstと手を握ったままジルの後を追い掛けていった。
―――そう。firstの水着姿を見たいという美女二人の行動でこんな事になったのだ。

「ありがとうジルさん!ありがとうシェバさん!」
「海っ海だぁぁああっ!」
「水着!美女!水着美女はどこだあああ!」
「おい!恥ずかしいから止めろっ…!」

楽しすぎて頭が湧いたのか若干名が危ない発言をしながら浜辺を見渡すのをピアーズが叱る。
有名なビーチなだけあって人が多く場所を確保出来ないと思いきや筋肉ダルマ集団に一般人は怯え逃げる様に空き場所が出来ていった。
自分達の所為で空いたとは思わずに次々とパラソルを挿していき場所を確保していくメンバーにジルは苦笑いをした。

「もう。皆怯えてるじゃない」
「……ならもっと人気が少ない所にしたら良かったじゃないですか」
「あらピアーズ。どの口がそんなこと言ってるのかしら?」
「イデデデデっ!すいま、すいませんっ!!」
「今日は何時も頑張っている貴方へのご褒美でもあるのよ?」
「はぃ!?―――っつぅ…!」

シルバーのビキニを着たジルの言葉に小さくぼやいたピアーズだがしっかりと届いてた様で笑顔で頬を抓られる。
ゆっくりと離された所為でじんわりと痛みが残り蹲る。
ジルの意味深な言葉に首を傾げていると大きな影に覆われ「何だ?」と思い顔を上げたピアーズは次の瞬間顔を林檎の様に赤くさせた。

「ニヴァンスさん。大丈夫ですか?」
「っ……!」
「?」

自分より身長が高く体重も重い男女と何時も思っているピアーズだが今の彼女の姿を見てちゃんと女なんだなと再確認した。
全体的に骨太だが細くしなやかな四肢に適度に付いた筋肉。
周りから見れば少々寂しいがピアーズから見て丁度良い大きさで形の整った胸。
普段は隊服を着てる所為で分からないが括れた腰に六つに割れた腹筋。
何よりピアーズの目が入ったのはこれまた形が良く硬さなど見せず柔らかい弾力をしてそうな尻。
それを際立たせるのがfirstの来ている水着だ。
淡い黄色の生地にスパンコールが施されているビキニである。(因みに紐パンである。)

「(マジかよ…!?)ジルさん――あざーっす!」
「ぅおっ。吃驚した」
「あ、ああ。悪い」

普段のクールな印象とは裏腹な心の声がキャパオーバーしつい表に出してしまったピアーズ。
行き成りの大声に驚いたfirstが前かがみ(谷間!)でピアーズを更に心配な顔で見詰めるのでピアーズのライフはダイイングになりつつあった。

「具合悪いんですか?何か飲みます?」
「いや、いい。そそそそれより、お前その水着っどどどうした?」
「(大丈夫かな…)ジルさんとシェバさんが買って下さったんです。ちょっと抵抗ありますけどね」

えへへ、とパンツの結び目を指で弄りながら笑うfirstにピアーズは今すぐタブレット(赤+緑)を一気したくなった。

「あー…first。ちょっと泳ぐか?」
「え?良いんですか?」
「良いも何も…海に来たんだから泳ぐ以外何があんだよ」
「えと…ナンパ?」
「お前俺をマルコと一緒にすんじゃねーよ」
「いひゃい!いひゃいでふっにひゃんすさん!」

失礼な事を言われたピアーズはfirstの硬い頬を引っ張る。
指圧に加わり伸びない頬を無理に伸ばされ痛みが倍増されたので涙が出て来たfirstは必死にピアーズに訴えかける。
少ししてから指を話すと赤く跡が残り若干の罪悪感が芽生えたがさっきの発言を思い出しすぐに掻き消えた。
ピアーズは溜息を吐くとfirstの腕を掴み海へと進んだ。

「――ったく。行くぞfirst」
「ふぇ、ふぇいっ」
「今日はとことん遊ぶからな(お前で)」
「ひぃ!笑顔の裏がコワイデス!!」

そのまま手を降ろしていき自然とfirstの手を握ったピアーズは前を向き嬉しそうに微笑んだ。