「バージル…」 テメンニグルの最上階で愛しい恋人の名を呟く。 アーカムという男に連れて行かれたバージルが心配だが私が付いて行った所で彼の邪魔にしかならない。 「君に会いたいよ」 左手の薬指に嵌めたシルバーリングを撫で早くバージルが戻って来るよう私は祈った。 指輪が一瞬冷たく感じ視線を落としたが特に変わりは無い。 不思議に思っていると目の前で本棚を漁る男が話し掛けてきた。 「彼が心配か?」 「……ふん」 完全なる力を手に入れる為に書物庫で情報を集めていれば何処から来たのかこの男が現れた。 信用は出来ないが確かなる情報は持っているので今はこの男――アーカムを利用の為傍に置かせている。 そして奴が言った「彼」とはfirstのことだろう。 テメンニグルで待機させるのは戸惑ったが一緒に行動をすれば無傷では済まないのを思い置いてきた。 「君の様な力を欲する者があのような只の人間を傍に置くなど…」 「黙れ。斬られたいのか」 「まさか。只不思議で仕様が無いだけだ」 「…さっさと調べ上げろ」 これ以上話すのは無駄だとアーカムとの話を切り上げfirstの元へと帰ることにした。 ずっと外で待ってるのは寒いので一旦中へと入り寝室のベッドに横になる。 タイミング良くシャドウがベッドに乗り上げ横になった私の腹の上に顎を乗せると大きな欠伸をした。 それが可愛く頬が緩んだ。 「シャドウ」 「きゅぅ」 「君のご主人様は何時帰って来るだろうね…」 「?」 私の質問にシャドウは首を傾げた。(まぁ当たり前だよな。) 通常の犬にはない質感の体毛に覆われた腹を撫でる。 何時だかバージルもこうやって私の腹に頭を乗せたのを思い出し一層早く帰ってきて欲しくなった――その時である。 「戻った」 「!? バージル!」 願って止まない恋人の行き成りの登場に吃驚して大声を上げればシャドウが飛び起き影へと飛び込んでいった。 シャドウに謝るよりも先に私はバージルの元へと走った。 大きく広げた私の腕の中にバージルを閉じ込めれば寒空の中にでもいたのかコートが冷たく感じた。 「外にでもいたのか?」 「そうではない。室内だが暖房器具が無かっただけだ」 「とても冷たい…」 「この位平気だ」 バージルはそう言うがよく見ると鼻の先と頬がほんのりと赤くなっている。 冷え性のバージルをそんな所に連れて行かせたなんて…と男に腹が立ったのと何も出来ない自分に嫌気が差した。 そんな私に気付いたのかバージルが私の頬に手を添えるとゆっくりと形の整った顔を近付け短くキスをする。 「――バージル?」 「お前の所為ではない。気にするな」 「しかし…、」 「寒いというなら…暖まれば良いだろう?」 バージルは最後まで言い終わる前に私を足払いさせその場に押し倒すと馬乗りになる。 ゆっくりとコートを脱ぎ中の衣服も次々と脱いでいけば程好く筋肉が付いた上半身を晒した。 「バージル、せめてベッドに行こうっ」 「構わん。お前とならどこでも一緒だ」 「……痛いぞ」 「良い。早くしろ」 言葉は冷たいが見詰める目は熱くこちらまで蕩けてしまいそうだ。 吸い寄せられる様にお互いの顔を近付ければさっきとは比べ物にならない濃厚で厭らしいキスをする。 力が抜けてきたバージルの腰を掴み一気に身体を回転させると今度は私が押し倒す形となった。 「はぁ…ああ、firstっ」 「バージル…愛してる」 「っ…もっと、もっと言ってくれ…っ」 キスの合間に愛してると言えばバージルは腰をくねらせせがんだ。 要望に応えながらバージルの服を脱がせば何も纏ってない状態になった。 バージルの冷えた身体に私の手の平を合わせれば間に何とも言えない温かさが生まれた。 「first…愛してる」 「私もだ。愛してるよバージル」 綺麗な青い瞳をうっとりさせ私を見詰めるバージルの瞼にキスを落とす。 このまま私達だけを残して時が止まれば良いのにと考えながらバージルの下腹部へと手を伸ばした。 |