「あら。これって―――」
「パパのだーっ!」


「……………」

鞄を開けて気付いた。
提出しなくてはいけない書類をどうやら家に置いて来てしまったようだ。
何度も鞄の中を確認しクリアファイルの中も見たが見付からない。
昼休憩の時間を使い急いで家に取りに戻れば間に合うかと考え溜息をつくと廊下から声が聞こえてきた。

「…、…?」
「そ……ね、ジェ…」
「…っ!パパの…」

声はどんどん近付いてくる。
それと同時に嫌な予感がしてきた。

「ここよ。ウェスカー隊長!お客さんですよ!」
「パパー」
「どうも有難う御座いました。あ、アルバートーっ」
「………」
「ブフゥ―――っ!?」

ジルに案内されたジェイクとfirstが俺を見付けると笑顔で手を振った。
クリスが飲んでいたコーヒーを吹き出しデスクを汚したのが横目で見えた。
firstと繋いでいた手を離したジェイクは俺のとこまで走ってくると短い腕を広げ俺の足に抱き付いた。
ぎゅぅぅっと音がしそうな程抱き付いた後俺を見上げ花が咲くような笑顔を見せる。
ああ。天使がここにいる。

「パパ。わすれもの、もってきたよ!」
「忘れもの?」
「うん!えっとね…あえ?ママっわすえものーっ!」
「あらあら。こっちよジェイク」
「あい。パパ、どうぞっ!」
「っ、グフ…ゥっ…!」
「…ああ。ありがとうジェイク」

firstお手製の林檎型リュックを漁るが目当ての物がなくfirstに助け船を出すジェイク。
にっこりとほほ笑みながらfirstはトートバックから俺が家に忘れた書類を出すとジェイクに渡しジェイクから俺へと渡された。
この一連の動作にバリーが笑いを堪え切れず吹き出すのが後ろを向いてても分かった。

「すまなかったなfirst」
「気にしないで下さい。むしろ何も連絡も無しに来てすみません…」
「いや。それこそ気にするな」
「そうだ!パパっあのね、ぼくね、ママをまもったんだよ!」
「そうか。えらいなジェイク」
「うん!わるいおにいちゃんたちがねママをいいめてたのっ。だからねぼくが「ママをいじめるな!」っていったの!」
「…何?」

車等から守ったと思ったらまさかの人間(雄)な事に眉間に皺が寄ったが一旦自分を落ち着かせキラキラした瞳でfirstを守ったことを褒めて貰いたそうに見詰めるジェイクの頭を撫でる。
firstは呑気に「またママを助けてねジェイク」と話す。

「…ジェイク。今からパパの仕事場を見学したくないか?」
「! したい!」
「よし。ならジルに付いて行きなさい。パパは遅れていくから。頼んだぞジル。……あとfirst。ちょっとこっちに来い」
「?」
「……行こうかジェイク君」
「うん!パパ。待ってるね!」

何かを悟ったジルはそそくさとジェイクの手を引いて部屋から出て行く。
クリスとバリーも空気を感じ取り静かに出て行くと俺とfirstだけとなった。
さて。色々と詳しく聞こうではないか。