ぎゅぅぅとジェイクが私を強く抱き締める。
母親として可愛い息子に抱き締められるのは嬉しいけど…人通りの多い道ではちょっと。

「ジェイク。ママちょっと恥ずかしいなぁ」
「……もう少し待ってろ」
「んむっ」

更に胸に押し付けられ息が詰まる。
顔を動かし上へと向かせ息を吸うとジェイクはどこかを見て睨んでいた。
その先を見たいがジェイクの腕で見えない。
しばらく抱き締められてると「…行ったか」と呟き解放された。

「誰かいたの?」
「あ?…違ーよ。お袋の小ささを確認してただけだ」
「ジェイクはパパに似たからねー。ママに似たら嫌だもの」
「……そうかよ」

話題を摩り替えたジェイクは私の手を取ると歩き始めた。

今日はジェイクとお買い物に来ててお目当ては特売品の物達である。
広告に載っていたのをピックアップしたら結構な量になりそうで困ってると優しい息子が手伝ってくれると言ってくれた。(うちの子天使!)
お目当てのスーパーに着きジェイクがカートを押してくれると言うので私は品物を探し始めた。

「あ。レタス安い…」
「まだ家にあったんじゃないのか?」
「パパのサラダに使っちゃったから…」
「(親父どんだけ食うんだよ)じゃぁ買っとくか」
「うん」

ジェイクは私が持ったレタスを持つとじろじろ見た後に元に戻し違うのをカートに入れた。
「こっちのが新鮮だ」らしい。
うちの子凄い!

沢山買っちゃった。
でも我が家の男達の胃袋のお陰ですぐに無くなっちゃうから妥当な量だ。
ジェイクはパンパンの袋を左手に三つ持ち、私は右手に卵だけ入った袋を持つ。
空いた手同士を繋いでスーパーから出る。
すると見知った黒いコートの男の人が立っていた――パパだ。

「あら。どうしたのパパ」
「仕事の帰りだ。ジェイク貸せ。持ってやる」
「良いよ。お袋のを持って…おい!」
「ふん。first、手を出せ」
「はいはい」

パパはジェイクから袋をふんだくると私と手を繋ぎさっきのジェイクと同じく歩き始めた。
手持ち沙汰になったジェイクがそわそわと手を動かすのでその手を握ると驚いた顔をした後照れくさそうにそっぽを向かれた。

「私、家族でこんな風に歩くのに憧れてたんです」
「そうか。言えば何時でもする」
「ありがとうございます」
「……俺も、気が向いたらやってやるよ」
「ふふ。ありがとうジェイク」

身長差があるから歩幅が違うのに二人は私に合わせゆっくりと歩いてくれる。
小さな気遣いにまた笑みが零れた。





「そういえば…なんで抱き締めたの?」
「あ?……あー。馬鹿な奴等がお袋にちょっかい掛けようとしてたからだよ」
「あら。こんなおばさ「何?――どういう事だジェイク」まだ若い証拠かしら!」
「嬉しがるなお袋。あと追っ払ったから心配すんなよ親父ウロボロスを出すな!」