仕事の都合上、滅多に休みが合わない(というより休みが無い)俺達に好機が来た。
遠征に行く筈だったfirstの部隊が集団インフルエンザに掛かり違う部隊が代わりに行くことになりその間連休になったのだ。
俺も任務が有ったのだが見兼ねたジルが「滅多に合わないのでしょ?代わるわよ(お礼は五倍返しで良いわよ)」なんて副音声が聞こえたが嬉しさで恐怖なんて吹き飛んだ。

そんなこんなで俺の家にfirstが泊まりに来た。

「クリス……なんだこの洗濯物の山は…」
「す、すまん…」

そして怒られている。
忙しいのと面倒臭いというのが重なり溜まっていった洗濯物を睨むfirstに頭を下げる。
firstは溜息を吐くとしゃがみ込み積もりに積もった洗濯物を持ち上げ洗濯機の元へ向かった。
俺も慌てて残りの洗濯物を抱え後を付いていった。

「洗剤と、柔軟剤…って、空かよ」
「買い置きがある」
「ん」

firstは渡した柔軟剤を慣れた動作で適量入れるとスイッチを入れた。
洗濯物の処分の達成感に浸っているとfirstに腕を叩かれる。

「忙しいからって溜めるな。いざって時に困るだろ」
「すまない。今度から気を付ける」
「どうだか。面倒臭がりのクリスだからやらないと思うけどな」
「うっ…」

firstの言葉に図星を付かれ顔を顰める。
後ろを振り向いたfirstは俺の反応を見て可笑しそうに笑った。

「ふっ。クリスは分かり易いな」
「…昔から家事は苦手なんだ」
「知ってる」

firstは空の柔軟剤のボトルを俺に渡すとリビングへ戻っていった。
渡されたボトルを適当に置いて俺も戻った。(後日。こういうのが駄目な所なんだとfirstに怒られるのを俺はまだ気付いてなかった。)
時間は昼を過ぎようとしていたので家で簡単に済ませようと冷蔵庫の中を確認したが……期待通りだった。

「………」
「………」
「ここで一番近いスーパーに行こう」
「…本当にすまん」

財布と上着を抱えスーパーへと俺達は向かった。


昼間にスーパーに来ると周りの目が気になって仕方が無い。
体格の良い男二人が仲良く買い物をしている姿を好奇心旺盛な奥様方にジロジロ見られ居心地が悪いがfirstは気にもせず食材を物色する。

「クリス。何が食いたい?」
「あー、最近インスタントばかりだったからな…正直firstが作る物なら何でも良い」
「じゃぁ、パスタにするか」

カルボナーラ?ペペロンチーノ?と首を傾げて聞いてくるfirstが凄く可愛く和んでいると早くしろと腕を叩かれた。

「ペペロンチーノが良いな」
「分かった」

片手でカートを押すfirstにどうしたのか聞こうとするがその前に俺の手が握られた。
吃驚して固まると「周りなんて気にしてたらキリないぞ」と言われた。
firstは俺が周りの目を気にしていたのに気付いてたようだ。
本当は堂々とfirstとこうして出掛けて手を繋ぎたいのだが恥ずかしく感じてしまい出来ないのだ。

「クリスは頭が固いな。確かに世間一般では受け付け難い関係だが俺はそれを承知で付き合ってるんだ。それとも俺は只の仲の良い同僚か?」
「っ違う!それは絶対に違うっ…俺はちゃんとお前をあいし…もがっ!」
「大声出すなよ。ここ、スーパーだぞ?」
「あっ」

firstが悲しそうに微笑みながら言った言葉に思わず大声を出してしまい周囲の目が俺達に集まる。
ここで会話を続けるのは出来ないと考えた俺は口を覆うfirstの手を取りレジへと向かった。

食材の入った袋を乱雑に揺らしながら帰宅し、中へ入るなりすぐにfirstを抱き締めた。
持っていた袋が嫌な音を立てて落ちたが気にしなかった。

「…ごめんな、クリス」

firstは俺の背中に手を回すと小さく謝る。

「困らせたい訳じゃないんだ。だけどさっき言ったのは俺の本音だから」
「…分かってる」
「クリスは俺と違ってノーマルだったからな。まだ受け入れなれないのは分かる。だからこんな生活が痛だと思ったらすぐにでも別れ――んぅっ、」

最後まで言わせず俺はfirstにキスをした。深く角度を変えながらキスをすれば口の橋から甘い吐息が漏れる。

「っはぁ…クリス、んっ」
「俺は、中途半端な気持ちで付き合ってる訳じゃない。だけど身体が反応してしまうんだ」
「……うん」
「別れようなんて言わないでくれっ…我が儘だと思うのは分かってる……」
「クリス…分かった、もう言わない。だから…泣かないでくれ」
「――っ」

言われて顔に手を持っていくと濡れる感触がした。
ぼたぼたと垂れていく涙はfirstの服に染み込んで色濃くなっていった。

「好きだっ愛してるっ…!」
「俺もクリスが好きだし、愛してるよ」

肩に顔を押し付けるとfirstに頭を抱える様に抱き締められた。
腰に回した腕に力を込めてより密着させた。