Novel | ナノ
愛しい人へ

「トラファルガー」
「……」
「トラファルガー」
「……」
「なあ、ロー」
「……今忙しいから後にしろ」


人の名前をまるで猫のように呼ぶ男にそういうと、ちぇと口を尖らせて背を向けて寝転がった。
それにしてもいったい何しに来たのか。
突然人の船に来たと思ったら何をするわけでもなく、ただベッドに座りこちらの様子を窺っていた。
特に何も言ってこないので構う事もなく、買ったばかりの本を読んでいたら呼ばれる名前。
しかし今読んでいるところが非常に興味深い章だったので、ユースタスに構えるわけがなく読書を続けたわけだが。
後ろから感じる拗ねてますオーラにため息を吐いて栞を挟んで本を閉じる。


「なんだ」
「……」
「おいユースタス屋」
「……」
「はぁ、いい加減にしろ“キッド”」
「……忙しいっつたじゃねえか」
「誰かさんがガキみてえに拗ねるから構ってやるって言ってんだよ」
「……ガキじゃねえし」
「はいはい。で、何の用だ」


掛け布団を抱き枕の様に抱きしめて顔を埋めるユースタスの赤い髪を撫でる。


「……てめえ今日何の日か覚えてねえのかよ」
「は?今日…」
「ちっ、だと思ったけどよ…行くぞ」
「は?おい、ちょ!」


ユースタスは急に立ち上がると、トラファルガーの腕を引いて船長室から出た。
行き先も告げずに連れていかれた先は、この島で一番高級なホテル。


「ここに何があるってんだよ」
「いいから黙って入れ」
「おいユースタス屋!……は?」


押し込められた部屋は一面真っ白でふわふわのもこもこ。
絨毯からソファからベッドまで、全部ふわふわもこもこ。
唖然とするトラファルガーを尻目に、ユースタスはソファに腰掛けテーブルの上に置かれたワインをグラスに注ぐ。


「おい。いつまで突っ立ってんだ」


早くこっちにこいと呼ぶ声に漸く放心状態から抜け出したトラファルガーは、言われるがままユースタスの隣に座った。
渡されたグラスを持ち、ユースタスを見る。


「ユースタス屋、そろそろどういうつもりか話せ」
「あ?…んだよ。まだ気付いてねえのか」
「だから何が…」


ユースタスは暫し言い辛そうに頭の後ろを掻くと逸らしていた視線をトラファルガーへと戻し、その藍を見つめた。


「Happy birthday my dear」
「…っ?!」


口付けとともに告げられた音にトラファルガーは目を見開いた。
もちろん己の誕生日などすっかり忘れていた事もそうだが、なにより


「ユ、ユースタス屋てめえ!寒ぃこと言ってんじゃねえよ!みろ!鳥肌立ったじゃねえか!」
「なっ?!て、めえは!他に言う事ねえのかよ!」
「は?あ、ああ。つーか、祝うんならプレゼント寄こせほら」
「あぁ?!…っとに、プレゼントならもうやっただろ」
「はぁ?何も貰って…もしかしてユースタス屋まさか、さっきのキスがプレゼントなんて言う気じゃ…」
「ちげぇよ!この部屋だこの部屋!バカかてめえは!」
「この部屋って…この部屋でユースタス屋と一晩過ごすのがプレゼントか?…不潔」
「てめえ…お望み通り犯してやろうか?あ?」
「なんだ違うのか…じゃあ何だよ」
「あー!くそ!だから!ここにあるもん全部やるっつってんだよ!分かれバカ!」
「…まじかよ」
「…おう」
「なら、このソファも絨毯もテーブルもライトも全部俺にか?」
「だから最初からそう言って…」
「ユースタス屋!」
「あ?何…」


部屋の中を嬉しそうに見て回っていたトラファルガーは、ソファで項垂れていたユースタスに抱きつくとワインで濡れた唇を押し付けた。


「…んっ……はっ、あ…んん」


ユースタスの腕が後頭部に回され、深く貪るような口付けを交わす。
服の上から腰を撫でていた手がするりと服の中に入り、直接脇腹を撫でる。


「ん、ちょ…ばか…離し、んうっ」


合間に文句を言うも聞き入れられる事はなく、そのままソファに押し倒される。
脇腹を撫でていた手が、ゆっくりと上がってくるその動きにも身体が震えた。
このまま快楽を求めようとしたその時、激しい音をたてて部屋のドアが開いた。


「トラ男〜!キッド〜!俺も祝に来たぞ〜!…ん?」
「キャプテ〜ン!お誕生日おめで…あれ?」
「おいルフィ!折角作ったケーキを振り回すんじゃね…あ」
「腹減ったから早く食おうぜ…あちゃー」
「船長!どっか行くならちゃんと言ってくれないと困りま…ぎゃああああ!」
「うるさいぞシャチ。何叫んで…ぎゃあああああ!」
「ユ、ユユユユースタス!てめえうちの船長に何してんだゴラァ!」
「てめ、てめえ離れろ!今すぐ船長から離れろ!」
「あらなに、お楽しみ中だったの?」
「悪いことしたわね。ごめんなさい?」
「すまないキッド。あまりにもうるさくて」


居場所ばらしちゃった☆と茶目っ気たっぷりなキラーは後で殴るとして、このまま続行できるはずもなくトラファルガーの上から退いた。
すると麦わら達はわらわらとトラファルガーの周りに集まりだし、テーブルの上に持参した料理を並べ騒ぎだした。
絶対こいつら騒ぎたかっただけだと思いつつ、大勢の奴らに祝われポーカーフェイスを保っているつもりだろうが若干口元が緩んでいるトラファルガーを見ると、まあいいかとユースタスもまた笑みを浮かべた。



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ってわけでローさんお誕生日おめでとうございまーす!
一日遅れてごめんなさい。忘れてたわけじゃないのよ。
今回は最後に麦わらさんのところから何名かとハートの三人とキラーさんを出したんですが、口調がね。
相変わらずそこですよね。課題は。
Ifでもし邪魔が入らなかったらの裏verも書きますので。
何はともあれ、ローさんハピバ!!


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