鉢屋、鉢屋。何故お前がここにいる?
小さい頃から言われていた言葉。
ここはお前の来るような所ではない、さっさと持ち場に帰れ。汚らわしい。
汚らわしいのはどちらだ。そう憎んで、憎んで、憎んで。
「お前にはせめて、」
そういって忍術学園へ通わせた親も、俺を軽蔑の目で見てくる者達もみんなみんな嫌いだった。
「「ろ組」には変人が集まると言うが、だからってあんなのがこられると困る。同じと思われたくはないな」
「い組で良かった。なあ、お前もそう思うだろ?」
「は?」
「鉢屋だよ、鉢屋。気持ち悪いったらねえよ。なんであんなのと共に飯食わなきゃならんのか」
「…」
「なんだよ、その目」
「いや、お前気持ち悪い」
「は?」
そういって、そいつは俺の方を見た。い組でも結構有名な変装名人だ。そして一言、「よろしく」と。

それから馴れ馴れしい態度のそいつが嫌いだった。自分以外の人間がすべからく嫌いな俺はどうしようもないとも、周りが悪いからとも思った。そしてある日、思いついたのだ。
代わってしまえばいい。
なんだ、簡単じゃないか。なんでこんな簡単なことを気付かなかったのだろう。都合のいい事に俺は変装が得意だ。そうだ、成れるはずだ。

「ああ…」
落とし穴に落ちた。なんでこれこんなとこにあるんだ…。登れない、し。二年になっても穴には慣れない。苦無ももってないし。あーあ、最悪。
「…やばくない、これ」
落ちてから夜が明け朝になり昼になった。誰も来ない。お腹も減った。待てど暮らせど誰も来ない。空を見上げてみると青い空が広がっていた。するとひょっこり、と誰かが覗いている。誰だろう。
「悪いんだけど助けてもらえない?」
伸ばされた手。掴むとサラ、と黒髪が揺れる。黒髪?
「よく見ておけ。俺が俺の素顔だ。そして、」
パッと目の前に俺が現れる。おー、凄い変装。
「これが今日から俺だ」
は?
それからだ。私は鉢屋に、鉢屋は私になった。顔を変えて、態度を変えて。まあ、いくら私が「私」だと訴えても誰も信じないのだけど。誰も私を私と、鉢屋を鉢屋と見抜けなかった。鉢屋は恐らく、鉢屋というものから逃げたかったのだ。
私は、今まで鉢屋に普通に接して、対等だと思っていた。だが鉢屋に対し私であることを許すのは、私は少なからず鉢屋に対して同情していたからなのだろう。
(ああ、だけど)
悲しいものだ。誰も私達に気付かない。それだけの存在。誰の記憶にも残らない、そんな存在。
「ああ、鉢屋。私達はなんと虚しいものだろう」
皮肉なものに私が鉢屋になってから環境はがらりと変わった。もう殆どの者が鉢屋を軽蔑しない。嫉妬の目ならあれど。仲の良い者達に囲まれ、とても良いものだ。だがそれも結局、「私」のものではない。彼らは私を鉢屋として扱い、だからこその友好関係だ。鉢屋は鉢屋で友人はいるようだが、それもそれ、「私」だからこそのものだ。
私達は何も得れない。この関係を続けている限りは、何も得れないのだ。これを不毛な関係と言わず、なんというのか。
(…やめよう、終わろうと言えないのは、私も今の関係を、立場を失いたくないからだろう)

いれたかったけどかいてるうちに思ってた通りに進まなくてカットした。本当は鉢屋も私も本当の自分が判らないって話だったのにどうしてこうなった。
いくら私だと言っても鉢屋と呼ばれた。親しい者も鉢屋と呼んだ。
(ああ、私は一体誰なのだろう)
もう自分が誰なのかもわからない。

説明
鉢屋が差別され続けてぐれ人間不信になる。忍術学園でも差別はされる。
そんな時に出会った、なんか仲良くしようとしてくる「私」。
「私」はい組で優秀で良い家柄の生まれ。鉢屋が望むもの全部持っていたので鉢屋は私になって全て得ようとした。
しかしそれは私と言う元があってからこそ出来たものであり、鉢屋としてなら到底得れないもの。だから結局は偽物の関係。これは鉢屋になった私にも言える。
一方私は差別とか気にしない。だから鉢屋とは通に仲良くなろうとしたけど、結局は同情して優しくしてイイヒトな自分に酔ってた部分があった。
だから鉢屋にされても文句は言わず(まあどれだけ言っても誰からも解られないが)鉢屋のふりをした。
どうせすぐ見破られると思ってたがそうでもなく五年へ。つまり誰からもその程度しか知られていなく、その程度しか見られてなかったってこと。
まあつまりどっちも何も得しない関係。どうしてこうなったが正しい。そんな不毛な関係の話が見たい。


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