よしなに
「チッ、なんでこんなに寒ィんだ」
「冬だからじゃない?」
真っ白い息を吐き出しながら、どんよりした冬空に何度も同じ悪態をつく晋助は正直しつこい。それでも辛抱強く答えてやる私のなんと優しい事か
「おい、あったまるもん買ってこい。あの缶コーヒーでいいから」
「は?自分で行けよ。なんならそのままくたばっちまえ、清々するわ」
「んだと、クソアマ」
「やるか、クソチビ」
ガチガチ歯を慣らしながら悪態をつかれたところで、大してというか全然怖くない。寧ろカッコ悪い。これでもご近所のマダムや女子達には色々と持て囃されている男だ、ああ寒い寒い
「てめえ、この前誰が肉まん奢ってやったと思ってやがる」
「奢ったって、たった一口齧らせてくれただけじゃん」
「そりゃてめえがダイエット中だから一口でいいつったからだろーが」
「…、おっとー…」
そう言えばそんなことを言ったような言わなかっような。いや言ったな。真実を思い出してがくりとうなだれる私を見て、晋助はざまあみろと鼻で笑う。むかついたので脹ら脛を思い切り蹴っ飛ばしてやったら、マフラーを掴んで思い切り後ろに引かれた。ぐえっ。ちょ、絞まってる首絞まってる
「分かったらさっさと買ってきやがれ、10秒以内でな」
「おまっバッカじゃないの、自動販売機まで行くのに10秒以上かかるっつうの」
「そん時はペナルティとしてもう一本奢れ。いくぞ。10、9、8…」
「ちょ、ペナルティって何だよ!こンの野郎っ、本当おぼえてろよ晋助おまええ」
「言われなくてもそんなクソだせえ捨て台詞大声で叫ぶような女なんざ、速攻で記憶から抹消してやらぁ」
同じ学校で同じ歳、同じクラスで席も隣。ついでに言うとご近所さん。物心ついたガキの頃から大抵一緒に居て、こういうやり取りを日常茶飯とする我々は、所謂幼なじみという間柄である。
090107 高杉/たかい