朝何気なく日捲りカレンダーを捲りながらああもう8月か、なんて数日経った今更呟いてみる。どうりで暑苦しい日が続くわけだ。頼みの綱である扇風機は生暖かい微風を送ってくるばかりで何の助けにもなりゃしねえ、誰かウチにクーラー買ってくれ頼むから。最早蒸し風呂になりつつある家に耐えきれず、行く宛てもなく炎天下の空の下へ繰り出してみた。


「あっぢー」


結果、じりじりと照りつける太陽と焼けたアスファルトの熱気というダブルパンチを受ける羽目になって後悔の念が押し寄せてくる。喉がカラカラに渇いていたので厚みのないかわいそうな財布を開いてみれば、なんと千円札が一枚入っていた。きっと哀れな今日の俺の為に昨日の俺がこっそりしのばせておいたに違いない。さすが俺。さっそくこの金を使って、涼しい店内でパフェを食べるという素晴らしい贅沢を味わいに行くかと歩き出した矢先。橋の上で行脚僧の格好をした長髪を発見したが、見るからに暑苦しいので無視しようと思う


「おい、銀時」

「人違いです」

「あ、そうですかすみません…なんて言うと思うか」

「ちっ!…あんだよ、なんか用か?」


コーヒー豆みたいな口した白いバケモノが筆談で挨拶してくるのを横目で見ながら渋々立ち止まる。暑苦しい。


「いや、用という用ではないが」

「あ?だったら呼び止めてんじゃねえよ」

「…今日が何の日か知っているか」

「はあ?」


知らねえよ、そんなもん。適当に手をヒラヒラさせてそう答えたらヅラは、そうか手間をとらせてしまったなと言ったっきり何も言わなかった。それから予定通りファミレスへ向かいクーラー天国を心ゆくまで堪能した後、地獄に堕ちるつもりで家に帰ってみれば。また坂本さんから小包が届いていますよと、いつの間に来ていたのか忙しなくはたきを動かす新八がこちらも見ずに言う。


「…なんなんだよ、どいつもこいつも」


机に置かれた包みを開けてみれば、また小さな包みが入っていた。それとは別に手紙が一枚ヒラリ、どうやら俺宛らしい。送りたくても送り先が分からないからもしもアイツと会ったら渡して欲しい。そんな内容。ふざけんな、と便箋を机に放り投げる。


「会うわけねーだろ、面倒なこと人に押しつけやがって」


もう何もかも見なかった聞かなかったことにしてしまおうかと、ソファーに身を投げ出し昼寝を試みるが如何せん。
今日は何の日かだ?知ってるよ、つうか嫌でも思い出すわ。会ったら渡して欲しいだ?パーティーでも開けってのか、いい加減にしろよ本当。バカだろ。やりたきゃテメー等で勝手にやりやがれ。俺はあんなバカのことなんざ、全然これっぽっちも知らねえから。


「………」


なんも知らねえけど、お前がぶっ壊したくてうずうずしてるこの世界にゃあよ、手前がこの世に産まれてきた日を頭のどっかで覚えている長髪のバカが居て。その日を特別な記念日として届きもしねえ小包送りつけてくるもじゃもじゃが居る。くだらねえと、お前は笑うかもしれねえが。それでも、そんな面倒くせー節介をクソ真面目になって考えてる大馬鹿者共が確かに三人ここに居ること、よもや忘れちゃいねえだろーな。なあ、高杉


「…………………、あーもうっ!今度会ったらぜってェアイス奢らせるからな、アイツ等ァアア」



そんな、クソ暑いある八月十日の昼下がり。



「晋助さま。晋助さま宛に小包が届いてるんスけど…」


怪しいので処分しますか。先刻、来島がそう言いながら自室の襖を開けた。心配要らねえ、とりあえずそこへ置いておけ。と怪訝そうな様子の部下を一度さがらせ其れを手に取る


「まだ、覚えてやがったとはなァ…」


宛先を見ればただ汚ェ字で「馬鹿野郎」とだけ書かれていたが、それだけで充分だ。嫌がらせだろう、子供用の包み紙で包装されていて。相変わらずやることが一々ガキなんだよ、と思わず喉の奥で笑ってしまった。





100810 高杉ハピバ

※補足/プレゼントは坂本、包装は坂田、郵送は桂担当


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