「すき」
「…」
ポツリと呟く声に、ああ今夜もかと肺にためた煙を深く吐く。夜毎。女は同じ質問を幾度となく俺に投げかけ、満足のいく答えを得るまで寝付こうともしやがらねえ。どうやら原因は此方にあるらしく、なかなか心の内を表に出さない俺に不安を抱いた所為だと言っていた。正直言って、煩わしくて仕方ない。
「ねえ、高杉は?」
「さあな」
「またそうやってはぐらかす」
「黙って寝ろ」
そんなもん口にしたところで、それが全て本心であるという確証はどこで得る。そんな不確かなものにわざわざ頼る必要など無いだろうが、餓鬼じゃあるめェし。オイ耳の穴ァかっぽじってよく聞けや馬鹿女。生憎だが、月並みの言葉でお前に易々全てを伝えきれる程安っぽい慕情なんざ持ち合わせちゃいねェんだよ俺ァ。好きだの何だのとただ喚いてないで、ちったァ自分で考えろ。
「本当は私のこと好きなくせに」
「どうだろうな」
「たーかーすーぎー」
「…」
「ばーかーすーぎー」
「殺されてえのかテメェ」
もう素直じゃないんだから、などと。痺れを切らしたのか拗ねたように頬を膨らます女にほとほと呆れ、もう勝手にしろと背を向けた。わかってンならいちいち聞いてくんじゃねえよ、と一人胸中で呟きながら
応える071217
→091015 再録