「きっと、私も其の中のひとつに過ぎぬのでしょうね」

「其の中、とは」

「この世に産まれ、何時の日か死に逝き、そしてまた、廻ること」

「ほう」

「馬鹿馬鹿しいと、思われますか」



とらえられぬ表情で男が瞬き、凛、と音が鳴る。一方、女はクスリと笑みをもらし双眸を閉じた。
しん、とする部屋。ぐるりぐるりと、見えぬ時を針が刻む。カチリ、カチリ、



「薬売りさん。私にはどうしても知りたいことがあるのです」

「一体、何を、知りたいのですか」

「意味を、」

「意味、ですか」

「そう。私がこの世に生を受けた意味を、知りたい」

「これはまた。随時と難しいことを、言いますね」

「やはり、貴方もそう思われますか」



実は、私もそう思います。女はふたたび小さく笑ってあおいあおい空を仰ぎ見た。番いの燕が、低く飛んでいる


世迷い言


080501 薬売り

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