「す、す、」
「す?」
「す、す、すいかの美味しい季節ですね」
「そーですね」
好きか嫌いかで答えろと言われれば、迷わず好きだと答える。ただし恋愛感情としてなのか、それとも人間的になのかという問いには少々答え倦ねてしまうのだけれども。
思えば随分長い時間をこの男の隣で過ごしてきたが、改めてそういった類の色々を考え直してみるとあっという間に口ごもる。ああでもないこうでもないといくら思考を巡らせど、それは一向にはっきりしてこない
「なに、すいか食いてェのお前」
「いやまあ…そういう訳でもないんだけれども」
「ふーん、あっそ」
その上。もう一人の当事者といえば、一体何を考えているのやらさっぱり分からん野郎ときたものだから尚のこと。謎が謎を呼ぶと言えばいいのか違うのか。なんだか大概奇天烈ななぞかけに出会ってしまった気がする
「あのさ、銀時」
「だからなんなんだよ、さっきから」
それでも。そんな男の隣が私にとって酷く居心地のいい場所である事に違いはない。そして有り難い事に銀時も其れを無条件で私に与えてくれている。よくよく考えて今し方、結局のところそれが全てなのではないだろうかという結論に達した。深い意味など殊更考える必要もないのだ、何故なら現に今も私はここで少なからず幸せというものを感じているのだから
「ううん、なんでもない」
「…ふーん、あっそ」
つぼみで千年080825 坂田/たかい