喉が嗄るほど呼んでみたけれど。足がもつれるほど走ってみたけれど。腕をもげるほど伸ばしてみたけれど。されども、彼の背中は一向に遠ざかっていくばかり。どうして振り向いてくれないのか。どうして追いつけないのか。どうして届かないのか。


「待って、置いていかないで」


ついには彼の影さえ見失い、いよいよ私の世界が傾き始める。次いで、底知れぬ喪失と絶望が一気に押し寄せてきた。
呼び止める事も、ましてやあの人の歩みを止めることなど出来る筈もなく。ただただ、どうしてどうしてと自問を繰り返して赤子の如く泣きじゃくるしかない自分は、なんと無力なのだろうか


「晋ちゃん、晋ちゃん」


いくら呼んでみたとて、仕様がない。今更何をしようとも、あの人は何処にも居ないのだから。もう、戻ってはこないのだから。


「晋ちゃん、ごめんね」


終焉


冷たくほの暗い其処は、それはそれは悲しい場所でしょう。たどり着けぬ、世界の果て



080403 高杉

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