見送りの際、さあ戦だと武装した皆を前にして如何様に表情を繕うかと四苦八苦する。勝ち戦を終えた彼ら全員が無事帰還すると勿論信じているけれど、赴くは命を賭する場所なのだから不安が無いと言えばそれは当然嘘になる。だからいっそ赤子のようにわんわん泣いて行かないでくれと言ってしまえたならどんなにいいか、という衝動をやり過ごしながら笑顔の作り方を必死で思い出すがせいぜい情けない顔を見せまいと俯いているだけで精一杯。伴わない思考と心情、いつまで経っても成長しない自分が堪らなく悔しい


「いい子にしていろよ」


そんな私を見透かしているかのように、小十郎さまが少しばかり節くれだった大きな手でくしゃりと頭を撫でてくれる。ここでいよいよ鼻の奥がツンと痛くなったので慌てて下唇を強く噛んだ


「…はい、小十郎さま」


その時前方で、颯爽と馬に跨らんとする政宗さまの姿を乱れた前髪の隙間より垣間見る。力強く響き渡る、蹄鉄


「何してる、そろそろ出るぞ小十郎」

「はっ!」


たちまち離れていく温もりが、名残惜しい。馬に跨った小十郎さまが、此方を振り返らない政宗さまを追う。大きくて勇ましい彼らのその背中がそれぞれ背負うものに私はどうすることも出来ず、ただただ此処で遠ざかるを見つめるばかり。どうかどうかと祈りを込めて、


「皆さん、御武運を」




感傷の圧縮に失敗



090302 伊達軍/ナイト

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