団子は好きだが、食べる専門であると主張したい。月見だからと言ってそれに変わりは無く、団子をこねくり回すのもそろそろ飽きたので、小太郎の目を盗みまんまと逃げ果せる事にした。日などとっくに暮れている


「あー疲れた、しばらく団子は見たくない」

「どの道てめえと銀時で平らげる団子を、見るも見ねえもあるめえよ」


さてこれからどうしようと倦ねていた先の縁側で出くわしたのは、いの一番に台所からとんずらした晋助。呑気に煙管なんざくわえやがってと文句のひとつ言ってやろうとも思ったけれど同じく逃げだしてきた自分がどうこう言えた義理でもないかと思い止め、隣に腰を下ろす


「中途半端とは言え手伝いはしたんだから、食べてもバチは当たんない!」

「あまりでけえ声を出すな。見つかりてえのか、てめえは」

「おあいにく様、分が悪いのは晋助の方だよ絶対。だってあんた最初から居なかったじゃん」

「大した差でもあるめェ」


そう言うなり煙管を置いて、どこからともなく出してきた酒を呷り始めた晋助を一瞥。おそらく逃げ出す際台所からくすねて来たんだろう、その抜け目の無さに感心するやら呆れるやら。そんなことを思いつつ、さてどんなものかと見上げた夜空がなんとも素晴らしいもので驚いた。今宵のような見事な満月を近頃頓と見ていない、なるほどこれは小太郎が張り切るわけだ


「ほう。二人並んで月見とは、随分と仲が良いようだな」

「ぎゃあ!」

「よぉ、ヅラぁ」

「ヅラじゃない、桂だ」


噂をすればなんとやら、随分と早いお出ましに今更慌てたところで仕様がない。頭に生えているあの角がただの錯覚であればいいと願うばかりである。しかし鬼もとい小太郎の後ろでそれを見ていた銀時が、晋助の持つ杯を目敏くとらえた


「おいおいヅラよ。一足先におっ始めてらァ、高杉の野郎」

「全く、油断も隙も成らぬわ」

「いつから酒を呑むのに許可が必要になったんだ?このウチは」

「貴様、」

「なにしちょるがか、早よう月見酒ば始めるぜよ〜」


驚いて視線を庭先に向けると、酒器と酒を抱え酒じゃ酒じゃと浮かれた辰馬の姿。一体どうして外に居るのかよく分からないが有り難い事に、すっかり気抜けしたらしい小太郎が仕方がないなと苦笑する。さあ月見酒だ、その案に異論を唱える者など居る筈もないのは言わずもがな。やがて始まるどんちゃん騒ぎを予想して、月もさぞや迷惑がっていることだろう。兎にも角にも。一応機嫌とりはしておくかと、まずは小太郎の杯に徳利を傾ける事にした。


月夜


090401 攘夷

◎たしか去年の9月頃書いてたものです…季節感なさすぎてすみません。
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