「なんか、せど(裏)さあるんでねーか?出し抜けに、せな事言われても……」
困ってるみたいだ。そりゃそうだよね。
見ず知らずの、しかもくのたまに告白されたって、騙しに来たとしか思われない。
「本当に、好きなんです」
上手い言葉も思いつかなくて、それしか言えなかった。錫高野くんは頭を掻いてあたしを見たり地面を見たり、目が泳いでいる。
「証拠は?オラを好いてるって証拠、見せられるけ?」
「証拠ったって、どうすれば……」
「例えば、好いた男にしかしねー事とか……」
「……え」
好きな人にしかしない事、それって、それって……
「う、嘘だべ!冗談さー。あはは」
「錫高野くん……あたし、あたし」
できるもん。好きだから、何だって。
「証拠、見て下さい……」
ここは裏庭。外だけど、人なんて来ないし……そういうヒトケのない場所に呼びだしたわけなんだし。
シュッと腰紐を解いた。
シュッ、シュル……って小気味いい音を立てて、袴を脱ぐあたしに、与四郎くんは止めに入ってきた。
「ちょ、待って……」
「?」
「そうで、なくて……その前の、ちゅ、ちゅ、チュウとか……」
「キスだけで、いいんですか」
顔真っ赤。留くんに似てるからもっと積極的なイメージだったんだけど、違うみたい。
田舎の方がエッチな事は盛んだって聞いたんだけどな。他にする事ないからエッチばっかりしてるって。
風魔って厳しそうだから、もしかしてあんまり女の子と接する機会ないのかも……?
なんか、かわいい。
真っ赤な顔も、訛ってる話し方も、真っ白な装束も……
やっぱり、あたしの鼻は理想の男の人を嗅ぎ分けたんだと思う!
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