「おかえり、義丸さん」


いつものように、清香がそう言う。ただいまって言う前にいつも清香に先を越される。あの日からもなぜか「おかえり」と時は義丸“さん”だ。


「相変わらず他人行儀」

「そんな事ないわよ」

「ほら、ちょっと冷たい」


料理をする手を止めないで会話に付き合う清香。危ないから料理は私がするって言うのに、彼女は平気だって答える。


「清香」

「はいはい」


やっと手を止めてこっちに来てくれる。本当は見えてるんじゃないかってくらい真っ直ぐに。


「私は清香の事ばかり考えてるって言うのに……」

「そうやってすぐ拗ねる」

「愛の一方通行は辛いねぇ」


冗談交じりにそう言いながら彼女の肩を抱いた。華奢な肩をすくめてそっと胸に顔を埋めてくれる。


「義丸はこうして欲しいんでしょ?」


私の手を引いて土間からいろりの横へと流れた。板ぶきのそこに押し倒されて、清香がまたがると私の手は自動的に彼女の太ももを撫でていた。


「こんな明るいうちから」

「あたしには一緒だもの」

「嘘。見られるのが好きなくせに」


そんな事ないって言いながら、襟を左右に開いて乳房をあらわにする。
両手をそこに伸ばして鷲掴みにすると、勃ちはじめた乳首が手の平に当たった。


「今日もどんなに清香がやらしいか教えてあげる」

「嬉しそうな声。機嫌なおったんだ?」

「そりゃ、ね」


こんな風に誘われて喜ばない男がどこにいるって言うんだか。
たぶんきっと男の方が単純で、直線的。まるで水平線みたいに。

シンプルな水平線が無数の複雑な生き物を抱えているように、私も清香を抱いて守っていてやりたいと思った。




end













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