夜になると雑渡さんは天井からぬっとあたしの部屋にやってくる。びっくりするから普通に入ってきてって言うんだけど「忍者だもん」と必ず天井裏から下りてくる。
それと近道なんだとも言っていたっけ。
今日は絶対に声を出さない。どんなに気持ちいい事されても、絶対に我慢するんだ。
耳に息を吹きかけられても、首筋にキスされても、おっぱいを舐められても、背中に指でツーッってされても、あそこに指を入れられたり、お豆を舌でくすぐられても……
「……っ!、んふ……ん」
苦しいよ。こんなの拷問だ。
声が出せないってこんなにつらいんだ。我慢に必死で雑渡さんの顔が見れないし、気持ち良ければ良いほど我慢が苦しい……やだ、こんなの。
でも、雑渡さんに嫌われるのはもっといやだ。
きっともっと大人っぽい色気のある人ならいやらしい声も似合うんだと思う。
あたしはお世辞にも美人とは言えないし、体型も子供みたいだ。
特に小さな胸はコンプレックスで、いつも恥ずかしい。
せめてこの胸がもっと大きかったら、少しは色っぽい声が似合ったのかな……
後ろから雑渡さんのが入ってきて、体が揺さぶられる。
目の前に枕があったからそこに顔を埋めて声が聞こえないように頑張った。
自分が声を出さないと、いつもは聞こえない音が気になると知った。
畳が軋んで横のたんすが揺れる。持ち手が振動でカチャ、カチャと鳴るのを聞いて急に恥ずかしくなる。
一番奥の方を突かれて、もう、大きな声がでそう……
我慢しなきゃ、と必死になり過ぎて、気がつけばあたしは息を止めていたらしい。
ぺちぺち。
暗闇から意識を戻してくれたのは雑渡さん。頬をぶたれて気がついた。
雑渡さん好みにするはずが、とんだ失態だった。
「おまえなー」
睨んでる。気まずいのと恥ずかしいのとで目を反らした。
「息くらいちゃんとしなさいってば」
「はい……」
「大丈夫?あと、そういう気分じゃないとか、体調が悪いなら無理に応じなくていいのに」
「そういう訳じゃ、なくて」
「言いにくいなら文書にして尊奈門にでも渡しておいてよ」
うつむくあたしを腕枕で慰めながら「おやすみ」と言って眠った。こんなはずじゃなかったのにな。
雑渡さんの包帯にあたしの涙がしみ込んだ。
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