『関西人のキミ』全5ページ


廊下を歩いていたら走る足音が背後から迫ってきた。この学園でそんな足音は初めて聞く。

振り向いて「廊下は走っちゃいけません」と言いかけて、その見た目に驚いた。

真っ赤な髪を揺らして近付いてきたかと思えば、私の手を引いて走り出す。


「きゃあっ!」

「頼む!かくまったって」


何か鬼ごっこでもしてるのか笑いながら関西弁でそう言う彼はびしょ濡れだ。


「こっち!」


彼が隠れ場所に選んだのは廊下の片隅に置かれた掃除道具を入れるロッカー。
引き込まれるように狭い狭いそこへ押し込まれた。

ホウキが二本、入ってるだけだったが人間2人は無理がある。


「ちょ……狭……」

(しぃっ!見つかるやんか)


肩と腰に手を回され、抱き締められる形で息をひそめる。なんで鬼ごっこに付き合わなきゃいけないの……


廊下では人の声が聞こえてきた。怒鳴るような怖い声。


「烏丸!どこだ、烏丸仁!」
「確かに……はぁはぁ、赤い髪が、見えたんですがね……逃げ足ばかり速くなって……はぁ〜」


1人はきっと学年主任の声。息切れしてるのは知らない先生。

この子、一体何を悪いことしたんだろ……

先生方はロッカーの前で立ち話を始めてしまって動くに動けなくなった。


見上げると、目が合って彼はペロッと舌を出した。目はシルバーのカラコンで舌には銀色の丸いピアスをしてる。

この学園にこんな派手な生徒がいて、今までどうして気づかなかったんだろう……

背は高くないが、それだけ顔が近くて妙にドキドキしてしまう。


濡れて貼り付いたシャツ。
髪から滴る水は私のシャツまで濡らしていく。


ロッカーの中に塩素の匂いが充満していた。






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