「いいんですか?」
「私にできるなら……がんばります」
何の役にも立たない新米教師だから、できる事は何でもしたかった。
「よかった。ヌードデッサンって他じゃなかなかできないから部員もOBも楽しみにしてたんですよ」
ぬーど???
「ヌードって……は、ハダカになるんですか!?」
「そりゃ着衣でわざわざお金払ってモデル雇ったりしませんよ」
「そんな、私、裸に自信はありませんっ!ごめんなさい、やっぱり無理です……」
とんでもないと断ったらがっかりした久瀬先生の顔。ちょっぴり罪悪感。
「どうしてもダメですか?」
「だって恥ずかしいです……人前で裸だなんて。それも男の子に……」
「そうですよね。僕も初めてヌードを描いた時は恥ずかしかったものです。今は女性の裸でも、描くとなるとテーブルのりんごと何ら変わりありませんけどね」
女性に失礼かなと微笑む久瀬先生。そんなものなのか、と思いながら先生が裸の女の人を描いている所を想像した。
真剣な眼差しで鉛筆を走らせる久瀬先生はきっと素敵なんだろうな。
「描くことに夢中になってしまうんです。生徒もそんな感じなんでしょうね。顔を赤らめてるのなんてせいぜい2分くらいなもんです」
「芸術の力ってすごい……裸婦の絵だってエッチな感じ、しないですもんね」
恥ずかしいと思うのは私が素人だからで、先生や美術部の子たちにとっては絵の勉強でしかないんだなぁ……
「セミヌードは出来そうですか?」
「下着姿って事ですか?」
「例えば、浴衣や襦袢を羽織って背中や脚の曲線を魅せるとか」
頭の中で想像してみた。
何となく色っぽい絵になりそうで、ちょっと心が動く。
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