「だーれだ?」
背後に忍び寄って両目を覆うと「きゃ!」と小さく悲鳴を上げてから私の手に自分の手を重ねた。
「うふふ、雑渡さんでしょ」
「当たり」
「お仕事はもういいの?」
「ん、あと少しで落城しそうだ。最後の一戦の前にちょっと休憩」
そう言い終わらないうちに小夜を抱き上げて隣の部屋へ連れて行くと、昼間っから布団を引っ張り出した。
「やだぁ……雑渡さんの助兵衛」
「私はただ寝ようとしてるだけだよ。忍者は夜働くんだから昼間寝なきゃ。変な想像する小夜が助兵衛だ」
頬染める小夜をからかって布団へ押し倒す。なんとも女らしい好い匂いがして、あぁ帰ってきたんだなと実感した。
「んもう……じゃ、この手はなぁに?」
小夜の胸をまさぐる私の手をピシャリと叩いて笑顔のままイタズラに睨む。私は見つめ返してそのまま口付けを浴びせた。
小夜の唇を味わうのはおよそひと月ぶり。深く舌が入るようにお互い顔を傾けて、唇を貪り合った。
「ただいま」
「お帰りなさい。寂しかった……」
「この戦が終われば、もっと一緒にいられるから」
「うん。早く終わらせて……一人ぼっちはイヤ」
「小夜……好きだ」
「あたしも、雑渡さんが好き……抱いて下さい……」
「言われなくても」
いつもはどちらかと言うと照れ屋な彼女だが、キスすると素直になる。口の中にそういうスイッチでもあるみたいだ。
甘えんぼになって、ずっと繋がっていたいとなかなか腰を振らせてくれなかったり……
入れたまま朝まで眠ってみたいなんて言ってた事もあったな。
「体に穴が空いてる寂しさが雑渡さんにわかる?あたし、雑渡さんのが入っていて初めてあたしなんだと思う」
「じゃあコレは小夜の体の一部か?」
「そう。あたしのなの」
「ははっ、それじゃあ毎日かわいがってやらなきゃな」
なんて手淫のマネをしたら可笑しそうに笑って。
いつまでも、そんな馬鹿みたいに幸せな日々がつづくはずだったんだ。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい。気を付けてね」
ほっぺにキスして、手を振って別れた。鼻唄まじりで忍務に向かった先には……
包帯男としての未来が待っていた。
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