激しいセックスの後、いつの間にか眠ってしまって目覚めたら部屋にはあたしひとりだった。
ソファーの上にピンク色のガウン、テーブルにはミネラルウォーターとバターロール、クロワッサンが置かれていた。
手足は自由。
あたしは真っ先に部屋のドアを開けようとしたが、当たり前のように鍵がかかっていた。
やっぱり、とため息をついてガウンを羽織りバターロールをかじって水で流す。
魔界之先生は本気であたしを監禁し続けるつもりなんだろうか。
それはないような気がした。
リスクが高すぎるし、彼女だっているんだ。
恋人とはできないアブノーマルなセックスをあたしで発散させただけの事。
今頃は頭が冷えて「ヤバい」なんてめんどくさそうにしてるかも。
ガチャリと音を立ててドアが開く。先生はにっこり笑って「おはよう。もう昼ですけどね」と横に座った。
「ピンク、可愛いですね。似合ってる」
「彼女さんのじゃないんですか?怒られますよ」
「残念。私のです。……思ってたのと色違いが届いたんだけど」
相変わらず通販が下手なんだと可笑しくてちょっと笑った。
「それからね、彼女と別れてきたんです」
「え……?」
「別に彼女にとっては私じゃなくてよかったんだ。あれを着ろ、髪は切れ、いい車に乗れって色々とうるさい子でした」
サングラスをしたまま先生は話し続けた。隣にいるのに少しも触れてこないのがなんだか寂しいと感じる……
「言う事聞いて小綺麗にして、なんだか自分が躾られた犬にでもなったみたいで……もう駄目だって思ってました」
「そうだったんだ……」
「僕が好きだったんじゃないんです。服と髪と車が好きでそれを纏う人間が必要だっただけで……って小夜に愚痴っても仕方ないですね」
「ううん。聞きたいです」
「ふふ、やめときます。それより、これで僕は小夜だけのものって事ですよ」
そう言うとキスをした。先生のキスは武器と言ってもいいくらい気持ちがよくて……
思わず自ら舌を絡めてしまった。
このキスはずるい。
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