「とりっくおあとりぃと」
真顔でそう言った魔界之先生。南蛮の風習なんて興味なさそうだと思っていたのに。
先生もお菓子欲しいんだ。大人のくせに。
とか言ってるあたしもちゃっかり八方斎様に飴玉もらっちゃったんだけど。
甘酸っぱい梅味でなかなか美味しい。
「お菓子持ってませんよ。あたし、もらう側ですもん」
「あるじゃない」
そう言うとあたしの顎を掴んで口付けと言うには乱暴すぎるキスをしてきた。
口の中の飴玉は先生の舌によって強引かつ器用に奪われ、あたしはぽかんと間抜けな顔をするしかなかった。
「飴玉があってよかったですね。なかったらイタズラされるところでしたね」
「い、今のも充分イタズラかと……」
これじゃあトリック&トリートだ。
「甘いですね」
と口元だけで笑う魔界之先生。それは飴玉の事なのか、隙だらけのあたしの事なのか。
口の中には飴玉の代わりに先生の舌が暴れた感触だけが残ったのだった。
21.10.12
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