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数年ぶりにマフラーを編んでみた。先生のバースディに何か贈りたくて。

今時手編みなんて……と思いながらも以前、調理実習で手作りしたいちご大福をすごく喜んでくれたのを思い出したから。

どうせなら手作りのものをあげようと思った。


選んだ毛糸は落ち着いたオリーブグリーンのモールヤーン。ふわふわで柔らかくて、編み上がりもルーズな感じが……編み目の下手さを誤魔化してくれる……はず。それに魔界之先生にはこういう変わり糸の方が似合うと思った。

放課後、高等部の校舎へと行った。周りはセーラー服で私服の自分は少し目立つ。何となく恥ずかしくなりながら、もしかしたら迷惑かもと考えた。

今までこっちに来た事なんてないのに、わざわざプレゼントを渡しに行けば変な噂が立つかもしれない。今度の土曜には会う約束もしているし……

先生の迷惑になる事を考えると行かない方がいい。早く渡したいけど……どうしよう。

黒い紙袋を胸に抱えて足が止まる。


「小夜?あぁやっぱりそうだ。どうしたの?高校からやり直すんですか?」

「ち、違います!」


後ろから声をかけられて正直ホッとした。魔界之先生はにっこり笑ってあたしの髪をくしゃっと撫でる。


「あの……」

「コーヒーでもどうですか?時間があるならゆっくりして行って下さい」


人前では言いにくい事だと悟ってくれたんだろう、そのまま二人で音楽準備室へと歩いた。


「せんせー彼女?」
「きゃはははーウソー!魔界之先生って彼女いたんだー」

「違いますよ。元教え子です……って聞いてませんね」


先生に冗談を言いながら走り去る女子校生。年齢はいくつも変わらないのにあのテンションは高校生特有のものだなと今になって感じる。


「若いですよね」

「小夜だってあんなんだったじゃない」

「あそこまでひどくないです」

「そう?いつも楽しい事ばかり目で追ってフラフラしてましたよ。僕の事だってたくさんの楽しい事のほんの一部で、寂しかった」


いつもはあたしを意地悪く責めるだけなのに「寂しかった」と言った。顔は笑顔のままで、弱い部分を見せるなんて反則だ。











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