あたしはどちらかと言うとモテる方だと思う。常に彼氏はいるし、二股三股だったりも……
正直、あたしが欲しいと思えば手に入らなかった事なんてなかった。
でも、どんな恋愛だったかなんて全くと言っていいほど覚えていない。
記憶に残っているのは初めて付き合った人と初めてあたしを振った人。
最初の彼氏はあたしから振った。
なかなか会えなくて、そもそも付き合うってどうしていいかわからなくてなんか面倒になって。
彼は「俺の事、好きじゃなくてもいいから一緒にいて」って言葉を最後に死んでしまった。
死ぬってわかってたら一緒にいたのに。
バイク事故であっさり逝ってしまった彼。
お葬式、傷だらけの顔を見て、お腹の奥から突き上げてくるような後悔に襲われたっけ。冷たいであろうその顔に、触れるのが怖くてあたしは畳の上に泣き崩れた。
そして初めてあたしを振った人は今でもなんで付き合ったかわからないくらい変な人。
あたしは16歳で向こうは31歳だった。学校の先生。
多分、センセイって響きだけで良く見えてしまったんだと思う。
3ヶ月付き合った頃に向こうから別れましょうかって笑った。
彼氏にして下さいって言った時と同じ笑顔で、笑ったんだ。
口角を上げるだけの嘘くさい笑顔。
なんかムカついて、忘れもしない……
魔界之センセ。
ダサいネクタイにワケわかんない靴下。髪は肩くらいまで伸ばしっぱなしで、徹夜明けには無精髭のまま教壇に立つような人だった。
「おや、久しぶりですね」
今、目の前にいる魔界之先生もやっぱり胡散臭い笑顔だった。
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