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我ながら不器用だと嫌になる。その気になれば「愛してるよ」と甘く囁く事くらいできるはずなのに。

私と違って小夜は顔に出るから、彼女の反応が怖い。

そこまでは求めてないのにと驚いた顔をされたら、また私を避けるようになったらと嫌な予測はいくらでも浮かんだ。


***

「「照星さぁ〜ん」」
「廊下を走るな」


田村と佐武。この2人は何かと慕ってきてくれるのでたまに面倒を見ていた。

今日も私に纏わりついては「照星さん、照星さん」とうるさい。


「これ、日本に置けるテロ行為とその対策をこの田村が纏めてみました!」
「田村先輩!それ、ほとんど僕が……!」


2人が言い争う間にざっと目を通す。未熟だが若者らしい理想が詰まった小論文だった。


「常用漢字以外はひらがな表記が鉄則!それに誤字脱字、送り仮名も間違ってる!基本的な事もきちんとできないでどうする!」

ガミガミと怒鳴っても「ハイ!」と笑顔の2人。

そう、こんな風に小夜も全力で慕ってくれていたら……と思ってしまう。
この2人と比べる事が間違ってるのだろうが、つい彼女の態度は素っ気ないような気がしてならないのだ。

「私はこれから用があるから」
「「僕も行きますっ!」」
「来なくていい!」

何とか二人を撒いて小夜に会いに行った。一ヶ月近く会えていないせいか、いつになく積極的に誘ってくれたのは彼女だ。少しでいい、お茶を飲むだけでもかまわないから会いたいと言ってくれた。

先に部屋を取って、眠かったら寝ていてるようにと言って電話を切ったが、どうしているだろうか。腕時計を確認するとすでに頂点を越えて日付が変わっていた。


メールされた部屋番号のドアをそっと開ける。電気は点いているものの、光の量は控えめだ。

「照星さん……」
「寝てていいって言ったのに」
「平気です。それにあたしが無理言ってしまって……あの、お疲れ様でした」

バスローブ姿の彼女。自然な丸みを描く胸のラインが下着を着けていない事を知らせていた。忙しさに忘れかけていた性欲が一気に膨れ上がる。まるで今までの分をまとめて発散させようとするかのように、強い欲望に襲われた。

「私も会いたかった……」

片手で腰に手を回し引き寄せると、空いた手で頬を撫でた。小夜が恥ずかしそうに赤らめた顔を上に向かせて唇を重ねる。
控えめにリップクリームだけの唇がキスには丁度いい。皮膚とも粘膜とも言えない柔らかさを唇で感じて、その奥へと舌を進めた。

唇を開く濡れた音。甘い息を嗅ぎ取って、小夜との距離が限りなく近い事に嬉しくなった。両腕できつく抱きしめて彼女の舌を、上顎の粘膜を、歯肉をと余すところなく貪った。

それだけでピクピクと快感に震え小さく喘ぎ始める。その姿に我慢できず、バスローブの紐を解いた。

「あっ……、待って下さい……」
「無理だ。そんなに煽っておいてオアズケはないだろう」
「でも、今日は……話があって……」
「あとで聞くから」

話があると言われて、どうしてだか逃げたくなってしまった。きっと曖昧なままは嫌だとか、はっきりしたいとかそういった類の話である事は想像がついた。
もしかしたら小夜の方から「愛してます」と言ってくれるかもしれない。

ただ、今それを聞くのはあまりにもタイミングが悪すぎる。

昇進が目の前にあって、これまで以上に忙しくなる事がわかっていたから。気持ちを聞いて、何ヶ月も会えなければ私が距離を置いたように感じるだろう。

私も本気だよ、君が大事だよと言ったって嘘吐きだと思われてしまいそうで、聞いてやれなかった。

もう少し、待って。
落ち着いたら、必ず私から気持ちを告げるから。









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